第3話 陵辱の始まり(前編)-6
それから、蛇沼は毎日のように隣の新妻を観察してきた。
そして、昼過ぎの2、3時間が一人ゆっくり過ごす時間であることを知った。
最初のうちは読書や刺繍をしている姿を2階の窓から覗き見ていたが、たまにカーテンがきっちりと閉められていることがあった。
蛇沼には、新妻が何をしているか容易に想像できた。
ある日、庭に忍び込み、カーテンが閉じられた窓に耳を当ててみた。
すると、低く唸るような機械音に混じって、くぐもった女の声が聞こえた。
それ以来、蛇沼はチャンスが来るのを待っていた。
それは予想外に早くやってきた。
新妻は、あっけないほど簡単に、男につけ込まれる隙を作ってしまったのだ。
「しかし、以外ですねぇ。奥さんのような綺麗で真面目そうな方がこんなことしちゃうんですからぁ。あんなに立派なご主人がいるのにねぇ」
盗撮した上、それをネタに脅すという卑劣なことをしているにも関わらず、勝手なことを言う蛇沼。
いつの間にか、紗希の肩を抱き寄せていた。
新妻は、自分の浅はかさと迂闊さを呪った。
こんな気色悪い男に触られるのに我慢できず、蛇沼の手を振り払うように身体を背ける。
しかし、蛇沼の態度は変わらない。
「奥さ〜ん。写真、返して欲しいんでしょぉ。こんな所じゃなんですし、中でお話しましょうかぁ?」
「えっ……家の、中ですか……?」
紗希の顔が戸惑いで曇った。
こんな男を家に入れたくない。紗希の顔にはそんな拒絶反応がはっきりと現れていた。
「別に私はここでもいいんだけどねぇ。でも、奥さんが困るんじゃないですかぁ、話が話ですから。どこで、誰が見ているか分かりませんよぉ。ヘッヘッヘッ」
勝ち誇ったような男の顔を見て、紗希は絶望的な気持ちになっていった。
紗希の腰を抱き寄せ、勝手に玄関を開けてしまう蛇沼。
紗希は、なす術もなく、うな垂れたまま、男といっしょに家の中へと入るのだった。