第3話 陵辱の始まり(前編)-2
「ああ、奥さん。こんにちは」
ドアを開けると、紗希の胸元に向けた視線を上げ、蛇沼がニタッとした顔で挨拶をした。
「こんにちは……」
紗希は、つい警戒するような口調になってしまう。
今までも、ゴミの出し方や物音など些細なことで小言を言いに来たことがあったからだ。
年齢は40代ぐらいの小太り体型。
身長が165センチを上回る紗希とそれほど変わらない背丈は、もしかしたら紗希より低いかもしれない。
サンダル履きにスエット姿。
薄くなった頭髪を撫でつけ、爬虫類のような顔が紗希を見ている。
少し前に離婚して、今は一人暮らしをしていると、裕一と引越しの挨拶に行った時に聞いた。
何の仕事をしているのか分からないが、昼間に顔を見かけることが頻繁にあった。
会うたびに、気色悪い笑みを浮かべて、紗希をジッと見つめるのだった。
長身、スマートな裕一とはまったく正反対のタイプ。
紗希にとっては、あまり関わりたくない異性であった。
「奥さん、今ちょっといいですかぁ?」
「はい……何でしょうか?」
紗希の緊張が高まる。
「いやぁ、実はねぇ。奥さんに、ちょっと見てもらいたいものがありましてねぇ」
「ごめんなさい。ゴミの出し方、間違ってましたか……?」
「いえいえ、そんなことじゃないんですよぉ、ヘヘッ」
顔の前で手を振ると、蛇沼はポケットから封筒を取り出し、急に声を潜めた。
「中の写真、ちょっと見てもらえます?」言うと、封筒を紗希に手渡すのだった。