ざわめき-6
「そうかなあ。修のちょっかいの出し方ってすごく愛を感じるんだけど」
沙織は、私の言葉に納得してないようで、眉間にシワを寄せている。
「私の反応がおかしくてからかってくるだけだってば。大体、郁美みたいに可愛い娘と付き合うような人が、私なんかを好きになるわけないって」
ため息を一つついてから、私は遠くの景色を見ながら淋しそうに言った。
沙織みたいな可愛い娘を好きになって、郁美みたいな可愛い娘と付き合う男なら、理想は果てしなく高いに違いない。
「うーん……、そうなのかなあ。ねぇ、桃子。その元カノの郁美さん……のプリクラとか画像とか無いの?」
沙織は手すりから手を話して私を見た。
手すりが錆び付いていたのか、手についたサビをポンポン払っている。
私はしばらく考えてから、ブレザーのポケットから携帯を取り出して操作し始めた。
私は携帯のメモリから画像を色々再生しては閉じ、を繰り返して一つの画像を再生した。
「……これ。入学したてのだからかなり前のだけど」
私は、沙織に携帯を差し出した。
その画像は、私と郁美がお互いの高校の入学式を明日に控えた時に撮ったもので、それぞれ違う制服でいるのが新鮮で、ふざけてお互いを撮り合った画像の一つだった。
「え! めちゃくちゃ可愛いじゃん。この娘が修の元カノなの?」
沙織は驚いて、食い入るように画面を見つめていた。
画面には真新しい鮮やかな青のブレザーをまとい、楽しそうに笑う郁美の姿が映っていた。
まだ髪の毛もショートヘアで今より幼くあどけないけど、やっぱり抜群に可愛い。
「そう。信じられないでしょ」
「うん……。可愛いって聞いてたけど、こんなに可愛かったんだ。なんか……美女と野獣って感じ……」
「沙織、言い過ぎ」
私は笑って言ったけど、郁美の存在を思い出すと、胸がチクリと痛んだ。
土橋くんから、郁美とは正式に別れたと聞かされたけど、あの娘とはあれから連絡をとっていない。
あれだけヨリを戻したがっていた郁美は、自分の気持ちに整理はつけられたのだろうか。