第五章 アバンチュールの幕引き-2
レースのカーテンを通した朝陽の中、沙智子の裸身が揺れる。
武志と組み合せた両手を支えに前後左右に大きく揺らせているが、
武志に跨った腰だけはわずかに前後に動いているだけだ。
隠れているが、クレバスには武志の分身が収まっているはずだ。
このラーゲは三ヶ月近い逢瀬の間で初めてのものだ。
それだけにスリリングな不倫の最後を飾るにふさわしいものだ。
「あぁ、いい気持ちだ!」
「わたしも…」
「どの辺りが感じてるの?」
沙智子の視線が宙をおよいだ。
「なんか…いつもと違うの」
「どう違うの?」
「奥にしっかり当っているの」
「腰を上げ下げしたら…もっといい気持ちに…」
「わたし、この方がいい」
「もっといい気持ちになればいいのに」
「だってぇ…そんなに動いたらたいへん!」
「え? どうして?」
「だって、武志さんのアレが奥に当って…」
「そうしてるのは沙智子さんだよ」
「武志さんのいじわるぅ!」
「そんなこと、心配ないよ」
「だけど…武志さんのアレがアソコに入り込みそう」
「アソコってどこ?」
「しらない!」
すこしばかりふくれっ面をした沙智子だが、それは形だけのもの、
手をベッドについて身構えた。
不安定なままでは、本腰を入れて動けないと判ったようだ。
沙智子の腰がいままでより激しく動き始めた。
「ううっ!」
「あぁ…いいのよ〜っ!」
「そんなにしたら…」
「もういっちゃうの?」
沙智子が武志の顔を覗きこんだ。
「そうじゃなくて…」
「………」
「アレが折れてしまうよぅ!」
「ええっ、ほんとう?」
本気にした沙智子が動きを止めて武志の顔を覗きこんだ。
武志の顔に笑みが浮かんだ。
「まぁ…そんなに簡単に折れたりしないけど…」
「だって…さっきギクッといったわ」
「あぁ…もしかして、筋肉痛でしばらく使えないかも…」
「えぇっ、ほんとう?」
「冗談だよ、冗談…」
「んもう…いじわるぅ」
「ん? 本気にしたの?」
「だってぇ…武志さんのアレ、ものすごく固いんだもの」
「だけど芯に軟骨があるわけじゃないからね」
しばらくして、沙智子が武志の上に突っ伏した。
「ん? 疲れたの?」
「こうしてる方が…いいきもちなの」
「僕が代わって突いてやろうか?」
「そしたら武志さん、イッテしまうんでしょ」
「もちろんだ。沙智子さんのアソコいいから…」
「そんなのイヤ!」
「どうして? 沙智子さんもいい気持ちになれるよ」
「わたし…もっとこのままで居たい」
「それならいいけどね」
「このままでいて、元気がなくなるよ?」
「いや、イクまでは大丈夫だ」
「このままでもイッテしまうの?」
「イキそうになった言うから動きを止めてくれたらいい」
「わかった。そうするわ」
武志がイキそうになると沙智子が動きを止め、またうごき始める。
それが何度となく繰り返されて…
武志にしがみついた沙智子が、顔を上気させて訴えた。
「わたし…もうだめ〜っ! いっちゃいそう!」
「そうか。じゃぁ、一緒にいこう!」
「このままでいっちゃうの?」
「そうだ。僕が下から突いてやる」
下から激しく突き上げられ、武志の上で沙智子が踊った。
「だめ! だめ! だめ〜っ! いっちゃう〜っ!」
「よ〜し、いくぞ〜っ!」
「あああぁ〜っ…」
ながいこと、武志の上で沙智子がふるえ続けた。
* * * * *
「一緒に食事をしたいけど、ここでお別れしよう」
「このドアを出たら…いままでどおりのお隣さんなのね」
「そういうことだね。僕は後に出るから、沙智子さんが先に…」
「でも、素敵な二か月だったわ。ありがとう」
ドアの前で、最後の口付けが続いた。