第二章 以心伝心-3
「おおっ! やっぱりいい味だ!」
「………」
思わず洩れた武志のつぶやきだが…
十数年前に子どもを産んでいるのだから、そんなにシマリがいい
はずはない、という予想がいい意味で裏切られたというものだろう。
この前と違って、落ち付いて味わうゆとりがあったからだろう。
だが武志につぶやきは、初めて押し入ってきたモノを受け止める
のに精いっぱいの沙智子には届かなかったようだ。
四十代半ばになる武志は、二年あまりの単身赴任中はそれなりの
アバンチュールを愉しんできたエッチな熟年だ。
二度目だから、いくら相手が熟しきったお隣の奥さんでも、われを
忘れて動き始めるほどウブではない。
分身をきっちりソコに収めると、沙智子に重なって抱え込んだ。
武志の腰がぐぐ〜っとしゃくり上がった。
「あうぅ〜っ!」
「奥さんのアソコはとてもいい味だ」
「いやっ! やめて!」
耳元に褒め言葉を吹き込まれて沙智子はもだえる。
「ん? もう止めていいの?」
「いじわるぅ! 奥さん…なんてイヤ!」
「あ…沙智子さんのアソコの味はとってもいい」
「ほんと? そんなに?」
「ほんと、こんなオ○○○ははじめてだ」
「……ねぇ、それよりも…」
「ん? どうするの?」
「もっとうごいてぇ」
「わかった。それじゃぁ…」
ふたつのからだが離れた。
もっとも腰はぴったり密着したまま、離れたのは上半身だけだ。
瞼が閉じられた沙智子の顔に武志の視線が突き刺さる。
これから攻めようとするとき、相手の変わり様を耳と目でしっかり
確かめたいのは男の本能なのだ。
武志の腰が目いっぱい後退した。
ゆっくり前進した腰が、行き着いた所でぐいっとしゃくり上がった。
「あうぅっ!」
ひと声うめいたきり、目を閉じたままの沙智子から言葉はない。
同じ動き、軽いうめきが何度かくり返され、ついに…
「あうぅっ!」
「いいの?」
「あっ、あっ、ああぁ〜っ…」
このあえぎ声のあと、沙智子が一気に燃え上がった。
胸元を大きく上下させ、武志の両腕を手繰ってしがみついた。
それに引き寄せられて二つのからだが密着した。
沙智子に力いっぱいしがみつかれたら、武志が自由に動けるのは
腰のあたりだけだ。
そのあと、沙智子を抱え込んだまま、武志の腰がはげしく動いた。
「あっ、あっ…イク、イク、イクぅっ!」
「ううっ…」
しがみついて腰を振る沙智子に誘われて武志の分身も弾けた。
* * * * *
嵐のような激しい時が過ぎて…
武志のふところの中で沙智子も落ち着きを取り戻した。
「あきれた?」
「いいや、とっても素敵だったよ」
「そうお? それならよかった」
「僕も安心したよ」
「どうして?」
「この前はずいぶん静かだったから…」
「………」
「僕のパワーがイマイチだったのかと…」
「そんなぁ…ほんとは、我慢してたの」
「ん? どうして?」
「だってぇ、初めてなのに、はしたないと思われたら…」
「やっぱり声を抑えていたんだ」
「………」
「顔が真っ赤だったし、アソコがぴくぴくしてたから…」
上掛けの中で沙智子の手が動いた。
「あ、たいへん! ティッシュを…」
さっきまで自分の中で荒れ狂っていた肉棒がすっかり勢いをなく
していることに気付いたようだ。
ティッシュを受け取って上掛けの下に消えて、ふたたび姿を見せた
手にはスキンが握られている。
「まぁ…こんなにいっぱい! お元気なのね」
「今日は特別ですよ」
「しばらくご無沙汰だったから?」
「それよりも沙智子さんが素敵だったから…」
「まぁ、お上手ばっかり…」
「いや、ほうんとうですよ」
「こんな濃厚なのを頂けたらよかったのに…」
「そんなことをしたら、沙智子さんならいっぺんで…」
「でも、来週ならぜったいに大丈夫なの」
「………」
沙智子はスキンの端をきちんと結んでから、なごりおしそうにティッ
シュに包んでくず篭に入れた。
武志は返事をしなかったが、沙智子の言葉は婉曲な誘いだ。