変わらない想い-2
「ちょっと寂しいものがあるな・・・・。」
二人はがらんとしたリビングに立った。続くダイニングに入ったケンジは言った。「俺、おまえの作ったパスタの味、まだ覚えてるぞ。」
「そうなの?」
「あれは実にうまかった。」
「何度か作ったよね。」
「うん。そうだったな。」
「ケン兄と二人だけで、この家で過ごした夜も作ったよね。覚えてる?」
「もちろん。たった一回きりのチャンスだったけど、おまえといっしょに風呂に入ったな、その時。」
「もう、ケン兄ったら、恥ずかしがっちゃって。」
「そりゃそうだ。思春期真っ盛りの男子が同い年の女の子の裸を見せられるんだぞ、恥ずかしいに決まってるだろ。」
「ケン兄って、そんな時、興奮するより先に恥ずかしいって思っちゃってたんだね。」
「おまえはその点、大胆だったよな。」
「ケン兄がシャイだったから、あたしは逆に安心できてたのかも。」
マユミが二階への階段を登り始めた。ケンジもすぐにあとに続いた。
マユミは自分の部屋のドアを開けた。カーテンの取り払われたベランダの窓からまぶしい光が差し込んでいる。
「何にもないと、広い部屋だったんだね。ここも。」
「そうだな。」ケンジはドアを入ったすぐのところに立った。「ここだ、ここ。」
「え?」部屋の真ん中にいたマユミが振り向いた。
「おまえと初めてキスした場所。」
マユミはケンジに駆け寄った。「再現してみて。」
「うん。」ケンジは少し照れて微笑んだ。
マユミはケンジの前に立ち、目を閉じた。「マユ・・・。」ケンジはマユミの背中に腕を回してそっと唇を重ねた。
しばらくして静かに目を開けたマユミは言った。「思い出した。あの時のどきどき、思い出したよ、あたし。」そして嬉しそうに笑った。
「俺も。」ケンジも笑った。
「ねえ、」
「なんだ?」
「ベランダに出てみようよ。」
「あ、おまえ何を思い出したのか、俺わかるぞ。」ケンジがにやりと笑って言った。
「やっぱり?」マユミも笑いながらベランダの掃き出し窓を開けた。
「今思えば、」
「かなり大胆なこと、やってたね、あたしたち。」
「俺はあの時、ベランダに出る前からすでにはらはらどきどきだったぞ。」
「立ったままでセックスするの、初めてだったから、あたしかなり感じてたんだよ、あの時。」
「そうなのか?」
「うん。それにケン兄その前にあたしをいっぱい舐めてくれたでしょ。それがすごく・・・。」
「俺、まだ若かったってこともあるけど、おまえに入れたら、すぐにイっちゃってた。ずっと歯がゆい思いをしてたんだ。」
「そうなの?」
「そうさ。おまえの興奮を十分に高めて、最後に一緒に思い切りイきたい、ってずっと思ってた。」
「男のコは、一回に一度だからね、イけるの。でもあの時は猫に助けられたんだよね。」マユミがおかしそうに言った。
「そうだったな。」ケンジも笑った。
「ケン兄、そんな心配してるけど、あたしケン兄に抱かれた瞬間からいつもイきそうになってたんだよ。」
「え?そうなのか?」
「もう、ケン兄のことが好きで好きで堪らなくて、そんな人があたしの中に入ってきて、一つになるって思ったら、どんどん興奮していくんだよ。」マユミはケンジの手をぎゅっと握った。「入れられた瞬間から、どんどん・・・。」
「そうなんだ・・・・。」
「だから、心配しなくてもよかったんだよ。」マユミは少し照れたように言った。