それぞれの癒し-5
『シンチョコ』の離れ。広いリビングの暖炉の前。
「マユ、」
「ケン兄、」
「なんか、明るすぎるな。」ケンジが少し恥ずかしそうに言った。
「ケン兄って、明るいところで見られるの、けっこう苦手だよね。でもいい身体してるんだから、もっと自信持ったらいいのに・・・。」
「何の自信だよ。」
「人に見せるの。」
「は、裸を人に見せる機会がそんなにあるわけないだろ。」
「スクールではいつも裸みたいなものじゃん。」
「そ、それとこれとは・・・・。」ケンジは赤くなった。
「いつまでも、そんなシャイなケン兄でいてね。」マユミは微笑んだ。
黒いTバックのショーツだけを身につけたマユミは、同じように白いTバック姿のケンジの唇を吸った。そしてしばらく二人はお互いの唇を味わい合った。
「初めてのキスは16の時だったね。」
「そうだったな。ごめんな、あの時は。突然おまえを抱いて、無理矢理キスしちゃって。」
「あの時も言ったけど、あたしとっても嬉しかったよ。あれからどきどきがずっと止まらなかった。っていうか、あれであたし、ケン兄に心を奪われたようなものなんだよ。」
「実は俺も。」ケンジはマユミの頬をそっと指で撫でた。「いろいろ・・・・あったな、俺たちの中や周りで。」
「そうだね。」
「でも、おまえと別々の家庭を持ってからも、ずっとおまえが近くにいてくれて、俺、本当に恵まれてるって思う。」
「あたしもそう思うよ。あたしにとってはケン兄って、大好きなチョコレートと同じ。」
「何だよ、その喩え。」
「毎日食べてたら身体壊すけど、時々とっても食べたくなる。」
「なるほどな。なかなか絶妙な喩えだ。」
「もし二度と食べられなくなったら、あたしきっと気が狂っちゃう。」マユミは笑った。
「大げさだぞ、マユ。」
「ケニーはご飯。ケン兄はチョコレート。あたしの中ではそうなんだよ。」
「俺も似たようなものかもしれないな。ミカとマユとの関係はね。」
ケンジはそっとマユミの身体を横たえ、ゆっくりと自分の身体を重ね合わせた。そして長く、熱いキスをした。