それぞれの癒し-3
健太郎と春菜の部屋。
ベッドのサイドテーブルに山のように積み上げられたアソート・チョコレート。その一つを手に取り、健太郎は春菜に手渡した。
「『シンチョコ』のアソートがこんなところで食べられるなんて・・・。」春菜はそれを受け取って笑顔で言った。
「このホテルに卸させてもらってるんだ。グランパの時代からね。」
「すごいね、シンチョコって。」
「グランパやグランマ、そして父さんや母さんが誠実にがんばってるお陰だよ。俺はその流れに乗っかってるに過ぎない。」
「そんなことないよ。あなただって一生懸命修行して、勉強して、しっかりした気持ちで跡を継ごうって思ってるんでしょ?それってすごく尊いことだと思う。」
「ありがとう、ルナ。」
「私ね、」
「ん?」
「ケンの匂い、大好き。」
「なんだよ、いきなり。」
「ケンの匂いってね、チョコレートとあなた自身の匂いが混ざったとってもいい匂いがするんだ。」
「そうなのか?」
「私があなたの家で初めてあなたの絵を描いた時、側に立ったあなたからその匂いがした。」
「へえ。」
「それも私がケンを好きになった理由の一つ。私にとってのフェロモン。」
「なんだよ、それ。」健太郎は笑った。
「水着、着てるんだ、今。」春菜が小さな声で言った。
「え?今日の昼間買ったっていう水着?」
「うん。ケンも穿いてくれる?」
「いいよ。どんなの買ってくれたの?」
春菜は枕元から小さな包みを手に取り健太郎に渡した。そして恥ずかしげに言った。「これ穿いて、私を抱いて。」
健太郎はにっこり笑ってシャワールームへ入っていった。