穏やかな休日-5
「でもね、ケンジはなかなかあたしを抱いてくれなかったんだ。」
「ほんとに?」マユミが訊いた。
「ああ。結局素面であたしとセックスしたのは、あたしが卒業する年の初めごろだったよな、ケンジ。」
「うん。俺、ミカのことが、もうすっごく好きだったけど、セックスすることに関してはなかなか思い切れなかったんだ。」
「どうして?」マユミが訊いた。
「マユとのセックス体験が長かったせいで、違う女性を抱く自信が持てなかったのと、ミカとの最初の繋がり合いがああいう状態でだった、ってことが引っかかってた。」
「まだ言ってる。まったく臆病なんだから。」ミカが言った。「でも、その初めての素面でのセックスの時はケンジ、優しかったし、積極的だった。何て言うか、ちょうどいいバランスのセックスだった。」
「ちょうどいいバランス?」
「あたし、その時思ったよ。こいつとは身体の相性、ピッタリなんじゃね?ってさ。」
「俺も思った。比べるわけじゃないけど、マユとは違う抱き心地、っていうかさ、ああ、この人と結婚したい、って実はその行為の時に俺、思ったんだ。」
「へえ、そうだったの?」ミカが意外そうに訊いた。
「マユとの時は『燃え上がる』って感じだけど、ミカとは『燃え広がる』って感じ。」
「ほほー。なるほどな。」
「あたしもそう言えばそんな感じだったよ。」マユミが言った。「ケン兄とのセックスもケニーとのセックスも、あたし今でも大好きだけど、ケン兄との時は一回一回が完結した話で、ケニーとの時は連載の各回って感じだもん。」
「それが夫婦ってもんなんだろうな。」
「そうだね。」
「さて、あいつら、今からうまくやっていけるかね。」ミカが二杯目のコーヒーを飲み干した。
4人の間に少しの沈黙が流れた。
ケネスがケンジとマユミを横目でちらりと見た後、言った。「ミカ姉、」
「何?」
「久しぶりに、わいとセックスせえへんか?」
「え?」ミカはカップをソーサーに戻した。「いいよ。どうしたの?急に。」
「なんや、急にミカ姉を抱きたくなってきた。」
「こんな昼間っからか?」
「あいつらがハワイでよろしくやっとる、思たら、むかつくやんか。」
「いや、別にむかつかなくても・・・・。」ミカはケンジを見た。「ケンジ、いい?」
「いいよ。」ケンジは微笑んだ。そしてマユミを見た。マユミは頬を赤らめてうつむいた。