披露宴-4
「ユウナもリサも、今日は本当にありがとう。」真雪が前に立った二人の女性にケーキを手渡しながら言った。
「おめでとう、真雪。」「おめでとう。」
「ユウナ、豪ちゃんとはうまくやってるの?」真雪が訊いた。
「そりゃあ、結婚してまだ一年ちょっとしか経ってないんだ。今からうまくいかなくてどうすんのさ。」
「それはそうだね。」
ユウナは高校の時の同級生高円寺豪哉と昨年結婚していた。
「高円寺君、毎日すっごく忙しそうよ。」リサが言った。「オーダーメイドのお弁当、ずっと作ってるもの。私がお店に行った時はいっつも。」
「そうなんだね。ユウナも配達、大変なんじゃない?」
「ま、今のうちにお店出す資金貯めとかないとね。」
真雪の隣の龍が言った。「豪哉さん、近いうちに料亭を持つって言ってたけど、本当なの?ユウナさん。」
「ああ。まったく夢みたいなこと言っちゃってさ。まだ料亭の看板ほどしかお金貯まってないっつーのに・・・。」
「高校の時から、かなり無鉄砲なところはあったけどね、豪ちゃん。」
「そうよね。でも高円寺君、なんだかんだ言ってこれまでもその『無鉄砲』でうまくいってるわけだし、遠くない将来、きっと立派な料亭のご主人になってるんじゃない?」
「料理の腕前は一流だからね。」真雪が微笑みながら言った。
「そうなったらユウナさんはその料亭の女将さんなんだね。」龍が言った。「楽しみだね。」
「それはそうと、」ユウナが言った。「リサはまだ結婚しないの?」
「今のところ、予定なし。」
「でも、つき合ってる人はいるんだよね?」真雪が訊いた。
「一応はね。」
「今から愛を育てる、ってとこだね。」ユウナが言った。
リサが唐突に言った。「私ね、龍くんみたいな人と結婚したい。」
「へ?」龍が驚いてリサの顔を見た。
ユウナが慌てて言った。「あ、あんた、まさかこの場で龍くんを真雪から奪おうなんて考えてるんじゃないでしょうね?」
「と、とんでもない!」リサは右手を激しく顔の前で振った。「龍くんみたいな、って言ったでしょ?」
ユウナはほっとしたように言った。「まあ、この期に及んで真雪から龍くんを奪うなんて絶対不可能だけどね。」
「できれば年下。私より背が高くて、行動力があって、優しくて男前で。」
「確かに龍くんだね。その特徴。」
龍が赤くなって言った。「お、俺そんな男じゃないよ・・・。」
「こんな風にシャイなのが絶対条件。」リサは微笑んだ。
「そう言えばあんた、」ユウナが言った。「高校ん時から龍くんのこと気にしてたもんね。かわいい、弟にしたい、っていつも言ってたよね。」
「そうなの。だから私、龍くんが真雪とつき合ってるって知った時はすっごくショックだった。」
「そ、そうなんだ・・・。」龍が小さくつぶやいた。
「ただのいとこ同士だって思ってたのに・・・真雪に裏切られた気分だった。」リサが悪戯っぽく真雪を睨んだ。
ユウナが気まずそうにリサと真雪の顔を見比べた。
「そ、そうだったの・・・ごめんね、リサ・・・。」真雪が申し訳なさそうに言った。
「って、大丈夫。真雪が謝ることなんかないわよ。それに、」リサは笑った。「それからよく観察してたら、龍くんは真雪といっしょになるべき男のコだってことがわかってきた。私なんかじゃ百パーセント無理。思えばあれからずっと真雪と龍くんはもうすっごくお似合いだと思う。」
「確かにお似合いだ。龍くんと真雪。いつも。どんな時でも。」ユウナも言った。
「二人を見てると、何だか、とっても癒されるのよ。」
「癒される?」
「二人がラブラブなのを見ると、私すっごく幸せな気持ちになる。」
「わかる。」ユウナも言った。「この二人、幸せが溢れすぎて、周りの人間まで幸せにしちゃう感じがするよね。」
「そうそう。その通り。」リサはまた笑った。龍は照れて頭を掻いた。
「ねえねえ、二人の写真、撮らせてよ。」ユウナが言った。「リサ、カメラカメラ。」
ユウナに促されて、リサはデジタルカメラをバッグから取り出した。
「水着姿の二人って、輪を掛けてお似合いだよね。龍くんも真雪もモデル並みのセクシーさ。」
「うん。私もそう思う。」
「笑って。」ユウナが言って笑顔を作った。龍は真雪の身体に腕を回して頬同士をくっつけ合った。パシャ!フラッシュが光った。
「龍くんったら、無意識に真雪のおっぱいに触ってるよ。」カメラの背面の液晶画面を確認しながらリサが楽しそうに言った。
「え?そ、そうだった?」龍は慌てて真雪から手を離した。
「触りたくもなるよ。抜群の美乳だからね、真雪は。」ユウナも笑った。
「ごめんね、さっきは変なこと言っちゃって。」リサが真雪の手をとった。「時々遊びに行ってもいい?」
「もちろん。いつでも来て。歓迎するよ。」真雪が言った。
ユウナは真雪と龍に目を向けた。「いつまでもラブラブでいてね。私たちのためにも。」
リサも言った。「お幸せに。」
「ありがとう、ユウナ、リサ。」