披露宴-3
司会の修平と夏輝は、大きなデキャンタを持ち、テーブルを回ってコーヒーのサービスをしていた。
「私たちも働いております。」修平が手に持ったワイヤレス・マイクに向かって言った。
「修平、黙って働くのっ!」別のテーブルにいた夏輝もマイクで言った。
「修平君、今日は本当にありがとうね。」ケンジの母親が、コーヒーを入れたカップを持った修平に声を掛けた。「真雪も健太郎も、それに龍も春菜さんも、すばらしいお友達を持って幸せだわ・・・。」
カップを彼女の目の前に置いて修平は言った。「いや、俺の方こそ、彼らにとってもよくしてもらってます。俺が夏輝と結婚できたのも、彼らのおかげ。ほんとにいい友だちですよ。
「ケンジとマユミ、二人がこんな素晴らしい時間を私たちにくれたんだ、って思うと、なんだか胸が熱くなってくる。」
「お二人にも俺たち、いっぱいお世話になっちゃって。」
「そうなの?」
「はい。」
「あの二人、双子なのに、いがみ合ったかと思ったら、急にべたべた仲良くなっちゃったり、よくわからない兄妹だったのよ。」
「そ、そうなんですか・・・。」
「それが、立派にあの子たちの父親や母親になってるんだから・・・・。」彼女は目を細めてステージ上の孫たちを温かく見つめた。
夏輝はシンプソン家のテーブルにいた。
「ほんま、わたしたち、幸せモンやな。」シヅ子が夏輝に笑顔を投げかけた。
「おめでとうございます。シヅ子おばあさま。」
「春菜さんみたいな、かわいくて素敵なお嫁はんもろうて、健太郎は果報モンやで、ほんまに。」
「いい子ですよ、春菜。あたしも自信を持ってお勧めします。」
「わかってるがな。ほんま、よう気がつくええ子や。それに龍くんも立派になって。」
「彼の小さい頃から知ってらっしゃるんでしょ?おばあさま。」
「ああ、もちろん知っとるで。ちっちゃい頃から元気で明るくて、優しい子やったわ。お父さんによう似て。」
「ケンジさんに?」
「そや。ケンジも高校の時から知っとるけどな、うちのマユミさんとそれはそれは仲のええ、素敵な少年やったわ。」
「仲良しだったんですね、ケンジさんとマユミさん。」
「そらもう、兄妹言うより、まるで恋人同士みたいやったわ。」
「龍くんと真雪、お似合いですね。」
「ほんまやな。そやけど、今までも家族同然につきおうてきたよってに、結婚っちゅうてもあんまり実感がわけへん。」シヅ子と隣のアルバートは一緒に笑った。
「夏輝サンも食べてくだサーイ、ワタシのケーキ。」
「もちろんです。頂きます。」