5 種の分岐点-1
5 種の分岐点
どこが分岐点だったのか……。
もっとも歴史の古い国、ストシェーダの建国伝説には、国章となっている金のトカゲにまつわる話が記されている。
千年前、天から降ってきた金のトカゲは、この地上に生きる者たち全ての命運を変えた。
その肉は大層美味で、多くの人間達と、無数の生物が食べたらしい。
そして数時間後、肉を口にしたものは、一匹残らずのたうち回り、多くは自らの身体を変貌させていった。
より巨大に、強力に。
特に爬虫類と相性が良かったらしく、小さなトカゲや蛇は巨大に膨れ上がり、牙や翼さえ生やした。
今日でドラゴンと呼ばれる種の始まりだ。
魔獣となった生物たちの中で、人間も姿を変えて行った。
ただし、人間は二種類に分かれた。
それは喰った量なのか、部位なのか、それとも他の要素だったのか、分岐点は誰にもわからない。
片方の人間は、全身に青黒い鱗を生やし、頭部はトカゲのような形に変化した。
リザードマンとなった人間たちは、他の獣たちのように、フラフラと散っていき、各地で独自の生態を作り始めた。
もう片方の人間は、見た目は全く変わらなかった。
ただ苦痛が引いていくと、自らの内部に新たな力が宿っている事を感じた。
頭に浮かんだ奇妙な言葉を唱えてみると、何も使わないのに火を起こしたり水を操れるようになっていた。
それだけでなく、考えもしなかった数々の高度な知識も、脳に備わっていた。
彼等こそが、始祖たる魔法使い。
魔力は彼等の子孫にも伝わり、やがて魔力を持つものが、持たない者……肉を食べなかった者の子孫を『蛮族』と呼び、支配する仕組みを作り上げた。
最初は協力していた魔法使い達も、やがて別れと出会いを繰り返し、大陸中に散っていくつもの国を造る。
そして千年も経ち、今日があった。