1 金のトカゲ-1
『それ』は突然、空から凄まじい勢いで落下してきた。
あまりにも巨大だったため、激突した地には広大な面積の深穴が空き、近くにいた者は消し飛ばされた。
極大な雷が落ちたような衝撃。
荒野にぽっかり空いた穴の底で、『それ』はかすかに蠢いていたが、やがて金色の身体を炎上させながら、ズリズリと這い上がってきた。
金色の巨大なトカゲ……そんな姿だった。
身体を土にこすり付けて火を消し、そこで力つきたのか動かなくなった。
恐怖の金縛りが解けた人々は、一目散に逃げ出そうとしたが……その足がふと止まる。
「……」
見えない手に引き寄せられるように、フラフラと金のトカゲへ近づく。
彼らを手繰り寄せたのは、非常に原始的な欲求だった。
【食欲】
何も無い時代だった。
爪も牙も持たない人間達が、獣より無力だった時代。
集団でまとまり、やっと一匹の獣をしとめ、飢えをしのいでいた時代。
焦げた身体から漂ってくる煙は、抗いがたい誘惑で、飢えた腹を誘う。
……金色の来訪者は、薄っすらと目を開けた。
この星で最初に出会った生物たちが、熱心に己の身体を貪り喰う様を、じっと優しく眺めていた。
――そして、千年余りの時が流れ……。