男友達-5
カラオケが終わると、午後四時をまわっていて、オレンジ色の空がやけに寂しげな印象を与えている。
私達は、土橋修の提案で自転車で海に向かうことになり、肌寒い潮風を浴びながらペダルを漕いだ。
十月に入ると風もすっかり冷たく、海に着いても人影は皆無と言ってよかった。
みんなは海に着いた途端にテンションが上がったようで、寒い寒いと騒ぎながらそこら中を走り回ってはしゃいでいる。
私は一人で防波堤の上に上がると、黄色に染まった海面をぼーっと眺めていた。
先程のカラオケでは大山倫平は失礼なことを言ったりすることもなかったし、つつがなく楽しめたと言えるだろう、端から見れば。
でも実際は、沙織も土橋修も大山倫平もみんな私に気を遣っているのがひしひしと伝わっていて、それがむしろ居心地が悪かった。
だから、今はそんな窮屈な空間から解放されてホッとしていた。
一方で、みんなが私に気を遣ってくれているのに、可愛げなく輪に加わろうとしなかったことを思うと、少し胸が痛んだ。
頭をよぎるのは、先ほどの大山倫平の寂しそうな笑顔。
……ちょっとひどかったかな。
ずっとぼんやりそんなことを考えていると、
「……澤。石澤!」
と、波の音に紛れて土橋修が私の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
後ろを見下ろすと土橋修だけが立っていて、沙織と大山倫平の姿が見えないことに気付いた。
「あれ、沙織達は?」
私は、結構な高さの防波堤から一気にジャンプして土橋修のそばに駆け寄ると。
「見ろよあれ」
土橋修が親指で指し示した方を見ると、沙織と大山倫平は遠くの方で追いかけっこでもしているのか、楽しそうに走り回っている。
「まあ、あのバカップルはあのままにしてなんか飲み物でも買ってこようぜ。確か駐車場の近くに自販機あったよな」
土橋修はそう言うとずんずん歩き始め、私は慌ててそのあとについていった。
防波堤から少し歩いた所にある駐車場は車一台停まっておらず、先ほど私達が停めた四台の自転車がポツンと置かれていた。
自動販売機の前で、私が何を飲もうか迷っていると、
「……そうだ」
と、一足先に暖かいお茶を買っていた土橋修はジーンズのお尻のポケットから携帯を取り出し、何やらいじり始めた。
顔がどことなくにやついている。
「あー、倫平? 俺らさ、腹減ってきたからちょっとコンビニまで行ってくるわ。お前ら、なんか食いたいもんあるか? ……うん、わかった。じゃあ待っててな」
彼はプツンと電話を切るとニヤニヤした顔をこちらに向けた。
「ねぇ、コンビニなんて近くにあったっけ?」
私の問いが聞こえなかったのか、土橋修は、
「よし、まずはチャリをどっかに隠すぞ」
と、自動販売機のすぐそばに停めていた自転車を指差した。