男友達-2
「そういやさ、倫平が今度四人で遊びに行こうって言ってたぜ」
土橋修はそう言うと、いつものように、私が読んでいた雑誌をパラパラとめくり始めた。
「……パス。土橋くんと三人で行ってきて」
私はぼんやりと彼がめくる雑誌を見つめながら愛想なく返すだけ。
誰が大山倫平となんか、遊ぶもんか。
「おい、俺が邪魔者になるだろ。何が悲しくてあのバカップルのイチャイチャぶりを横で見てなきゃいけねーんだよ」
土橋修は雑誌をめくる手を止め呆れた顔で私を見た。
「だったら、あの二人だけで遊んでくればいいじゃん」
「……お前、ホントに倫平が嫌いなんだな。四人で遊ぼうって提案したのはもともと沙織なんだぞ」
「沙織が? だって私沙織から何も聞いてない……」
自分だけ知らなかったことに妙な嫉妬心が膨れ上がる。
「沙織さ、お前に気を使ってんだよ。お前が倫平を嫌ってるの知ってるから、あんまり倫平の話もしないだろ? 沙織ももともと倫平のこと苦手だったみたいだけど、最近はようやく好きになってきたみたいだし。それは気付いてたよな?」
「うん……、なんとなく気付いてた」
沙織は私に遠慮して、大山倫平の話はほとんどしない。
でも、休み時間や放課後になると沙織はどことなく落ち着かなくなる。
大山倫平の顔を見るとパアッと嬉しそうな顔になる。
いくら鈍感な私でも、沙織が大山倫平を好きになっていってると言うのは、嫌でも気付いていた。
「沙織が倫平のこと本気になってきたから、親友のお前にも倫平と仲良くして欲しいんだろ? やっぱり、自分の彼氏が親友に嫌われてるってのは、なかなか辛い所じゃね?」
「それはわかるけど……」
私は叱られた子供のように小さく背中を丸め、言葉を濁した。
「じゃあ決まりな」
「ちょっと、勝手に決めないでよ!」
「大丈夫だって。今度は俺も途中で帰ったりしないから」
そう言ってニカッと笑うと、土橋修はガタンと音を立てて椅子から立ち上がった。
そして、ニヤニヤした顔をこちらに向けると、
「多分カラオケに行くと思うぞ。お前、歌が上手いって沙織が言ってたから楽しみにしてるからな」
と、軽く手のひらをポンと私の頭の上に置いてから、教室を出て行った。