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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第9話-7


「お待たせ。ごめん、スープはセルフサービスだったんだ。あそこにスープ・ポットがあるんだけど、取りに行ってくれるかな?」
 例の“カツサンド・プレート”が3人分乗っているお盆を手にして、大和が、結花と航の待つ席にやってきた。彼の言うように、日替わりスープはセルフサービスでよそわなければならないので、両手がふさがってしまった大和はそれができず、結局は二人の手を煩わせることになった。
「カッコ悪いなぁ」
 そんな自身に呆れて、苦笑している大和。もっとも、ここまで世話をしてもらったのだから、結花も航も、大和のことを“カッコ悪い”などと考えるはずはない。
「センパイの分、わたしとってきます!」
「じゃあ俺は、お茶を持ってきます」
 と、今度は大和をその場に座らせて、自らが動いた。
「「「いただきます」」」
 ようやくにしてテーブル全てが揃い、三人は食事を始めた。
「あ、おいしい」
 結花の第一声である。小ぶりではあるが、カツがジューシーかつ柔らかく、美味なだけでなくて、非常に食べやすいものだった。
「こういうのって、ベタつくもんなんだけど…」
 一方、航のほうは、添え物であるところのハッシュドポテトが気に入った様子であった。作り置きの場合、揚げた油が沁み込み過ぎて、ジャガイモ独特のさっくり感がなくなってしまう。それがない、ということはこのハッシュドポテトは、コンビニで見かけるようなそれではなく、その都度揚げられているものなのだろう。
 カツ同様、小ぶりなサイズではあるが、軽食として考えるなら充分すぎる添え物であった。
「「ごちそうさまでした」」
 あっ、というまにプレートは空になった。満足そうな二人の様子を見て、大和の頬も緩んでいた。
「ところで、美作先生は元気だった?」
 食事だけでは物足りないので、そのまま会話が続く。
 結花が高校のときに所属していた、軟式野球部の監督である生物教師の美作は、大和が3年生だったときの担任でもあったので、気になるところであった。
「元気も元気。相変わらずノックが下手で、みんなに突っ込まれてましたけど」
 ついでにジョークも、面白くなっていないそうだ。
「でも先生、守備は凄い上手いんだよなあ」
 軟式野球部との合同練習があったとき、その軽快なフットワークとグラブ捌きを目の当たりにして、感嘆した覚えがある。
「わたしがここを受けるって言ったら、“得意科目、全然違うぞ、大丈夫か?”って、心配してくれました」
「結花ちゃん、理系少女だったよね。苦労したんじゃない?」
「それはもう!」
 でも、センパイに会うために頑張りました。…と、言いたくても言いだせないのが、結花の残念なところだった。積極的に見えて、恋に臆病なのである。
「…と、ごめんね。木戸君そっちのけで、ローカルな話になって」
「大丈夫ですよ」
 大和と結花の話を、じっと聞いている航。自分と関係のない話で場が盛り上がっていても、それを厭う気持ちは少しもなく、静かにその場に溶け込んでいた。
 その雰囲気に、一年前に対戦した彼の兄・木戸亮と似通ったところを感じる。
「木戸君、お兄さんに似ているって、言われないかな?」
「え? 俺が、ですか?」
 意外な様子で、航が自分を指差した。
「自分では意識してないんですけど……あ、でも、誠治さんには言われたことがある」
「誠治さん?」
 それは航の独り言にも似た呟きだったろう。しかし、大和の耳は、彼が口にした名前について、微かな記憶を揺り動かされるような、引力めいたものを感じた。


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