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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第9話-5


「キャッチボールの基本は、しっかりできてるね」
「そ、そうですか……?」
「腕だけじゃなくて、身体全体をしっかり使っているよ。だから、息も上がるんだ」
「な、なるほど……」
「あと、三角キャッチボールは集中力も使うから」
 大和に投げた後、それがそのまま自分に返ってくるパターンも想定しなければならないし、また、ボールを投げる相手が変わるので、右側左側と、送球する際の身体の動きにも注意を払わなければならない。
 対面によるキャッチボールに比べて、スタミナの消耗が激しいのも道理であった。
「結花ちゃんはやっぱり内野手向きだね。スナップの使い方とか、グラブの捌き方とか、とても器用だ」
「あ、ありがとうございます」
「木戸君は地肩が強いね。外野手なのは知っていたけど、ピッチャーもやってたんじゃないかな」
「えっ、わかるんですか?」
「肘の使い方と、球筋を見ればね」
 確かに航は、母校・城南学園の野球部では、外野のレギュラーに加えて、控え投手も兼任していた。しかし、例の練習試合のときはマウンドに立たなかったので、大和には外野の選手だったという認識しかなかったはずだった。
(そこまで見ていたのか…)
 航自身は、キャッチボールをこなすだけで精一杯だった。それなのに、ボールを送球する先を色々変えながら、自分たちの一挙手一投足をしっかりと把握しているこの先輩に、航は早くも、心酔を覚えている自身を見つけていた。
(だから俺は、ここに来たんだ)
 航の所属していた城南学園は、彼にとっての高校生活最後の県予選大会で、ベスト8まで進んだものの、準々決勝ではコールド負けを喫した。序盤でエースが打ち込まれ、リリーフをした航も失点を重ねて、その勢いを止められなかったのだ。救いだったのは、自分たちを負かした相手が、そのまま予選大会で優勝し、甲子園に出場したことだった。
『俺の実力は、これぐらいなんだろうな』
 そういう諦めを抱いた彼は、野球に一区切りをつけた。
 そんなある日、兄の亮に依頼を受けて、この双葉大学との練習試合に参加した。その中で見た、草薙大和の投打に渡る鮮烈な姿が印象に残り、この人と同じチームで野球をしてみたいという意欲が芽生え、双葉大学に入学してきたのだ。
『草薙君な、お前のこと、とてもいい選手だって誉めていたよ』
 兄の亮に、そう聞かされていたことも、きっかけのひとつだ。
「二人ともセンスがあるよ。楽しみになってきたな」
 憧れの人から、そう言ってもらえれば、感激もする。
 結花も航も、体と頬が熱くなっていたのは、スピード感のあるキャッチボールによるものだけではないと、それぞれが自覚していた。


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