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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第9話-21


『(う、あ……へ、へんなとこ、さわるなぁ……)』
 痴漢の指が、結花の尻の間にある部分を殊更強く刺激してきた。いわゆる、“肛門(ア*ス)”に手(指?)を出してきたのである。
『(な、なんで……そんなとこ……う、うぅっ……)』
 まさか、そんなところを弄られるとは想像もしていなかったので、結花の混乱はますます強くなってしまった。
『(あうっ……!)』
 触れた指先で、下着越しに中心部分を弄くられ、結花の背筋に怖気が走る。
『(そこ……は……だめぇ……!)』
 なぜなら結花は、この電車に乗る直前に、不意に催した“大きい方”を駅のトイレで済ませていたばかりだったのだ。
 残念ながら、駅のトイレには和式の便器しかなく、当然、ウォシュレットもなかったので、ペーパーだけでお尻を拭かなければならなかった。
 丹念に、“大きい方”を済ませた汚れを拭い去ったはずだが、奥の方に何かが残っている違和感を、最後まで消せなかった。ウォシュレットに慣れているから、それを使わないと、どうしても拭き残しの不安が残ってしまう。
『(さ、さわらないで……いま、きたない……から……)』
 もちろん、それを狙っている痴漢が、指の動きを止めることなどありえない。結花の抵抗がないのをいいことに、下着越しに尻の窄まりを嬲る動きを更に強めて、今にも指をそのまま中に入れてきそうであった。
 もし、今の状態でそんなことをされようものなら、違和感として残っている何かが、下着についてしまうかもしれない。
『(いやだ……いやぁ……!)』
 それを想像して、結花の怖気は更に強まった。
 …その時だった。
『(あ…)』
 痴漢の指の動きが止まった。そして、耳元で何か呻きのような声が聞こえた。
『(え……なに……?)』
 見ると、手首を掴まれた状態で、その手が震えているのが視界に入った。掴んでいるほうの手を遡ってみると、自分と同じくらいの高校生と思しき、少年の怒気をはらんだ表情が見えた。

 ぐきっ…

『(!)』
 ぐえ、という蛙の声に似た呻きの後、掴まれている手が“がくり”と垂れた。
『(も、もしかして、折ったの?)』
 さすがにそれはないだろうが、相手の手首を潰したのは間違いない。いずれにせよ、凄い握力だと思った。
 少年はその手首を、まるで汚らしいものを投げ捨てるかのように、強く振り払った。結花の背後から、慌てたように逃げ去る気配があって、おそらくはそれが、手首をつぶされた痴漢本人だったのだろう。
『(………)』
 その手首を潰したと思われる少年は、少し前までの怒気が嘘のような、涼しげな顔をして、結花とは違う方向に顔を向けていた。
 “痴漢から自分を助けてくれた”…結花がそれと気づいたのは、電車が目的の駅にとまり、人の流れが生み出されてからで、結局その場では少年の姿を見失ってしまい、礼を言うこともできなかった。
 だから、予備校で再び顔をあわせ、しかもガイダンスを受けるときの座席が隣同士だったときは、あまりに都合の良い展開に、可笑しくなって笑ってしまった。
 少年のほうは、自分の隣に座るなり、いきなり笑い出した結花のことを訝しげな表情で見ていた。
『さっき、わたしのこと助けてくれたでしょ。ありがとね』
 それが、木戸航との出会いだった。


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