決着-7
土橋修は両頬に空気を含ませて必死に笑いをこらえていたけど、ついには耐え切れずにブハッと噴き出して、再び大笑いをした。
「お前、マンガとかテレビの見過ぎじゃねえの!? 大体好きでもない男からそんな告白されたらどうすんだよ? どうせキモいとか騒ぎ出すんだろ?」
再び土橋修の笑い転げる姿が視界に映ると、顔がカアッと熱くなって涙がこみ上げてきそうになった。
出任せとは言え、大好きだった漫画をバカにされ、大笑いされている。
悔しい。腹立つ。
私はこんな惨めな状況から一刻も早く逃げ出したくなった。
こないだは土橋修の優しさを垣間見て、沙織が昔彼を好きだった話を聞き、彼を見る目が少し変わったつもりでいたけど、とんだ見込み違いだった。
やはりコイツも大山倫平と一緒だ。
私は勢いよくベンチから立ち上がって、こみ上げてくる涙をグッとこらえ、土橋修をキッと睨み付けると、
「……あんた、マジムカつく」
と低い声で言い放った。
そしてカバンを乱暴に持ち、駐輪場へと向かおうとしたその時だった。
「おい、石澤!」
最初土橋修はポカンとした顔で私を見ていたが、私が本気で怒っていることに気付くと、慌てて右手首をガシッと掴んできた。
バランスを崩しそうになり、少し足元がふらついてしまう。
「ごめん……。言い過ぎた。お前の言ってることがなんか可愛かったから、ついからかいたくなっちまったんだ」
睨み付けた目がフッと緩んで、思わず土橋修を凝視した。
彼は少し気まずそうにあさっての方向を見ている。
よく見ると、頬がほんのり赤くなっていた。