出会い〜そして〜-5
「え……?」
「私はお主と一緒に風呂に入りたいだけなんじゃが……まぁ、それでもお主が明確な理由
を求めているというのなら、提示してやってもいいぞ」
僕と一緒にお風呂に入る明確な理由……
「先ほども言ったように私はお前さんの世話を焼きたいのじゃ。それで世話の範疇には勿
論、風呂での世話も入っているわけじゃ。故にお主には私と一緒に風呂に入って欲しいと
いうわけじゃな」
お風呂場で僕の世話を……コンさんが僕の世話を……
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」
「……何を赤くなっておるのじゃ?」
「あ、いえ、何でもない……です」
言えない。お風呂場での世話と言われて、エッチな想像をしてしまっただなんてコンさ
んには絶対に言えないよ。
「ほほぉ……そうか。そういうことか」
え……っ!? まさかコンさんに僕の思ってたことがバレた? あ、いや、まだ確定し
たわけじゃない。コンさんの思い違いの可能性もあるんだ。だから焦るのはまだ早い。
「まぁ、お主が望むのなら私としては叶えてやらんこともないぞ? なぁ……♪」
あぁ、コンさんがニヤニヤとイヤらしい笑みを浮かべている。これは絶対に僕の考えて
いたことがコンさんにバレてるよ。
うぅ……初対面の相手――正確には二度目だけど、会って間もない相手に自分のイヤら
しい思考を読み取られるのはかなり恥ずかしい。
「それでは、風呂へと向かうかの。お主も異論はないな?」
「あ、いや……ですから――」
「裸の一つや二つで恥ずかしがることはないじゃろ。それにこう見えても私はなかなかに
綺麗な裸をしておるぞ?」
チラリと一瞬服をはだけさせるコンさん。僅かに見えた服の隙間から覗くコンさんの白
い肌。そんな肌を見せられたら……
「ごくり……」
「はは、唾を飲み込む音が聞こえておるぞ。そこまで私の裸が楽しみか♪」
「ち、違――っ、僕はそんな……」
「別に誤魔化す必要はあるまいて。男は誰しもスケベな生き物じゃからな。お主も男であ
る以上、女性の裸に興味があるのじゃろ?」
「そ、そんなこと――」
「目が泳いでおるぞ。それにわざわざ隠す必要はないじゃろ。先ほども言ったが、男は誰
しもスケベな生き物なのじゃ。だから気にするな」
ポンポンと肩を叩かれて慰められる。何なのだろうコレ。
「あ、そうじゃ。そういえばお主の風呂の浴槽は二人入れるぐらいのスペースはあるのかの?」
「い、一応なんとか入れるくらいのスペースはありますけど……」
ゆったりと余裕が出来るほどのスペースはない。一人で入る分には問題ないんだけどね。
「そうかそうか。二人一緒に入れるのなら問題はないな。よし、行くぞ」
「あぁ、こ、コンさんっ! ぼ、僕の話を聞いて――」
「却下じゃ。どうせお主のことじゃから、一緒に入らない面倒な言い訳を言うつもりなのじゃろ?」
「うぐ――っ」
そんなことまで察しがついているんですね。ほんと、この短時間で僕の性格を把握され
すぎじゃないだろうか? まさかこれも神使の力?
「そんなわけあるはずがないじゃろ。バカなことを考えてないで、さっさと風呂に入るぞ」
「あ、あぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
僕の必死の抵抗も空しく、ズルズルと引きずられていく。
「何をしておる。さっさと服を脱がぬか」
無理やりお風呂場まで引きずられた僕は服を脱げずにいた。だ、だって、コンさんの目
の前で服を脱ぐのはかなり恥ずかしい。上半身ならまだ我慢は出来るが、下半身まだ裸に
ならないといけないから正直つらい。
「まったく、お前さんは生娘なのか? 服ぐらいサクッと脱がんか」
そう言ってババっと服を全部脱いだコンさん。
「こ、コンさんっ!?」
な、何でこの人は人前で服を全部脱ぐことが出来るのだろうか? 羞恥心とかないのかな?
「どうした? 服を脱がねば風呂に入れぬではないか」
「あ、そうなんですけど……せめて、タオルか何かで隠してもらえると……」
コンさんの裸は心臓に悪い。服の上からでもなんとなくスタイルがいいのは分かってた
けど、こうして一糸纏わぬ姿になるとそのスタイルのよさが際立つ。
大きく膨らんだ胸に引き締まった腰。そして大きくとも張りのありそうなお尻。こんな
にも心臓に悪そうな姿を見せられ続けるのはかなり拙い。
絶対に反応してはいけない部分が反応してしまうから。正直、今の段階ですでに反応し
かけてるしね。
「何故、風呂に入るのに身体を隠さねばならぬのだ? 意味が分からぬのじゃが」
「意味とかどうでもいいですから! お願いですから隠してください」
コンさんのためではなく、僕のためにお願いですから身体を隠してください。
「……断る。いくらお前さんの頼みでもそれは聞けぬな」