映画館-7
暫くして目が覚めると、男の姿は無かった。どうやら1人で先に帰った様だ。ポケットを探ったがお金は盗まれていない。僕は仕方なくフロントで支払を済ますと、ホテルを出た。そして冬の夜空のなかを何とか家に帰った。
翌日は会社には行かず、冬空の中を淋しく歩いた。そしてもう一度あの男に合えるかもと思い八重洲口の地下街に行って見ると、前の場所に男はいなくてこの前置いて行った私物を入れた黒いビニール袋も無かった。
「何処へ行ってしまったのだろう?この淋しい僕を置いて」。僕は地下街を出て家出した少女の様に宛ても無く冬空の下を歩き回った。
そして何時の間にかこの前の映画館にたどり着き、中に入って真ん中あたりの席に座ると、まだこの前の映画をやっていた。いかつい色黒の男の頭がすらりと伸びた女の白い足の股間に潜込みクンニ攻めしており、女が「ああん、そこそこよ、もっと」と喘いでいた。
そのうち暖房が利いて来て、ぼんやりと女の喘ぎ声を聞きながら僕は寝入ってしまった。暫くして目が覚めると隣の席には誰も座っておらず、映画は終わりに近づいて”完”の文字が大きく浮かび上がった。