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It's
【ラブコメ 官能小説】

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★★★★-2

「あー。可愛い子いねーかなー」
「こんなに人がいるとゆーのに、可愛い子一人もいねーってどーゆーことだ」
12時半。
校内で一番大きい食堂の窓際にある八人席を堂々と四人で陣取って昼食を摂る。
湊の向かいに座って可愛い子探しをしているのは、大学に入ってから一番最初に仲良くなった男、冴島尊、通称タケ。
尊は、一言で言えばチャラ男。
色んな女を色んなところで引っ掛けまくっている。
その隣で一緒になって可愛い子探しをしているのは、北川雅紀、通称マー。
雅紀とは高校からの付き合いで、悪い事をいっぱいしていた。
185cmあり、それなりに女からはモテていたが意外と一人としか付き合ったことがない。
そして、湊の隣に座るだて眼鏡の物静かな男、中村啓吾、通称ケイちゃんは頭が良さそうに見えて学年ワースト3に入る頭の悪さ。
大学に入ってからは四人で行動していた。
いつもこうして食堂でくだらない事をするのが日課だ。
「お前らいつも同じ女ばっか見てて楽しいか?」
「他にやることねーもん」
「春だし眠くなってきたなー」
「意味わかんね」
四人でケラケラ笑う。
「タバコ吸い行こーぜ」
雅紀の言葉に四人で立ち上がり、外の喫煙所へ向かう。
今日は暖かい。
「湊、タバコ吸わねーの?忘れたんか?」
雅紀が煙を吐き出しながら言った。
「ん、いや。やめた」
「マジで言ってんの?なんでまた?」
「金でも貯めよーかと思ってね」
湊は先程買ったりんごジュースを飲みながらしれっと言った。
貯金というのは嘘ではないが、一番の理由は陽向が喘息だからだ。
あの日、タバコをやめようと心に誓ったはいいものの、三日で挫折。
しかし陽向と会うたびに、あの無邪気な笑顔を見るたびに、やめなければ、と思った。
もう、苦しそうにする彼女を見たくなかったから。
陽向といる時に吸わなければいい話だが、それじゃいけないとなんとなく思ったのである。
「なんか欲しいもんでもあんの?」
「んー。特に」
「ははっ!」
「将来の事も考えたら、金も必要だしなーと思ってさ」
「まぁー確かにな」
五分程して食堂に戻る。
席につきトランプをしていると、「こんにちわー」と声を掛けられた。
「おー!奈緒ちゃーん!今日も可愛い☆」
雅紀がはしゃぎ出す。
奈緒は雅紀のお気に入りだ。
自分にゾッコンだという事は知っているが、あえて何も答えず満面の笑みで軽く挨拶する。
「ねー、五十嵐」
ほら来た。
「あ?なによ?」
「今日ヒマー?」
「暇っちゃ暇だけど。なんで?」
「飲み行かない?ガイダンス終わったら駅前の居酒屋で飲むんだけど」
奈緒が猫なで声で誘う。
「えー!行きたい行きたい!俺ちょー暇人!」
興奮したように雅紀が声を上げる。
「看護師の卵と飲めるなんてサイコーだよなー。なっ?タケ」
「マジ最高!俺も行きたい!ねー、陽向ちゃんも来るの?」
尊の言葉に過剰反応する。
そういえば随分前に「陽向ちゃん、可愛いよねー。小っちゃいから守ってあげたくなるー!」とか言ってた事を思い出した。
「ヒナ?来るんじゃない?聞いてみよっか?」
「聞いて聞いてー!」
尊が楽しそうに言うと、奈緒が大声で陽向を呼んだ。
陽向が人混みをかき分けてチョロチョロとこちらに向かってくる。
「なに?」
奈緒を一瞥した後、湊の存在を確認し、一瞬ギョッとしたような顔をした。
その反応に笑いが込み上げてくるのを鼻をいじるフリをして我慢する。
「今日陽向も来るでしょ?飲み」
「えっ?あ…誰か誘ったの?」
「うん。この四人方」
陽向の目が泳ぎ出す。
「どーしよっかなー…。あたしあんまり飲めないしなー」
「いつも飲み会来るじゃーん!行こーよー」
「行こっかなー。ビール飲みてーし。奈緒ちゃんのおごりで」
湊は陽向を横目で見た後、楽しそうに言った。
「ほんとー?行こ行こー!やばい!ちょー楽しみ!おごらないけどー」
湊の返事に奈緒はキャハッと笑って大興奮した。
しょっちゅう飲み会に行き、断るのが下手くそな陽向がこの誘いに乗らないわけがない。
尊の前の言葉も気になるし、付き合っていることを知らせるには好都合だ。
「だってさ!ヒナも行こうよー」
「そーだよ!陽向ちゃんいない飲み会なんて意味ねーよ!」
尊が「お願いっ」と陽向に懇願する。
引っ込めこの野郎と言ってやりたいところだが、それには触れず「お前も来る?」とあえて挑戦的な目を向ける。
陽向は何かを悟ったのか「ん…行く」と答えた。
「決まりー!じゃあ17時半ね!」
奈緒は場所を告げて陽向と共に去って行った。
その五分後、携帯の新着メールを告げるバイブが鳴った。
『湊のばか』
陽向からのメールだった。
『なんで?』
短文を送りつける。
陽向からの返事はすぐに来た。
『女の子の飲み会に行くとかありえない。奈緒が湊のこと好きってわかってるくせに』
鼻で笑ってしまった。
陽向は嫉妬している。
分かりやすい性格って損だな、と素直に思う。
今日がどんな飲み会になるか、色んな意味で楽しみだ。


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