合コンその後-2
「おい、これ資料室に持ってってくれないか」
ある日の放課後、職員室の前で美紅は担任に声をかけられた。
「えっ、ひとりでですか?」
見るからに重そうな資料を前に美紅が言うと担任は、そうだなーと辺りを見回した。
「おっ、ちょうど良かった!川島!お前これ一緒に運んでくれ」
「いいっすよ」
(…颯太くん!)
「あっ、あたしひとりで運べます」
慌てる美紅に担任は怪訝な顔をする。
「なんだ?せっかく川島がいいって言ってんだから、手伝ってもらえ」
「…はい」
颯太と並んで歩く美紅は無言だった。
自分の中にいるもうひとりのいやらしい自分に気づいてしまってから、もう前のように颯太の顔を真っ直ぐ見られなくなっていた。
そんな美紅に颯太が話かける。
「最近美紅、変じゃない?」
「えっ」
「なんて言うか…俺避けられてる気がするんだけど」
「そっ、そんなことないよ!気のせいじゃない?」
「そっか?」
資料室に着くと二人で棚に荷物をしまう。
かなり大量にあるので案外時間がかかってしまった。
「それで最後かな。あ、俺がしまうから。かして」
「うん」
颯太に資料を手渡そうとした時、美紅の手が颯太の指に触れた。
「!」
ばさばさと派手に、資料が床に散乱する。
「ごめんっ、拾うね」
しゃがんで資料を拾い集める美紅を颯太も手伝う。
憧れの男子といるのに、美紅は早く部屋から出たい一心だった。
「よし、終わった。あ、授業始まっちゃうな。早く戻ろうぜ!」
「…うん」
大好きな笑顔もまともに見ることが出来ず、美紅は短く返事を返す。
廊下を戻る二人の影は西日を受けて長く伸びていた。