第6話 ボーダーライン-1
「言いたく無ければ・・・・まあ良いでしょう。ヒロミさんの過去はベッドの上で知る事になるでしょう。いずれは、僕の過去とクロスオーバーする時が来るはずです。それまで、二人でパンストプレイを楽しみましょう・・・ふふ・・・・・・」
「タケルさんの過去っていったい・・・・・・。それにパンストプレイに繋がる接点は・・・あっ!・・・・・・」
彼はまた、私の会話を遮るかのように、パンティーストッキング越しのクリトリスに口づけをした。
今度は、舌先で軽くニ三回転がしながらな、口づけをする動作を何度も繰り返した。
パンティーストッキング越しの為か微妙に感じる愛撫だが、早く頂点を迎えたい私としては、歯痒くも焦れったい快楽だった。
「あっ・・・あっ・・・タケルさん・・・もっと・・・もっと強くお願い・・・はあ・・・はあ・・・・・・」
「ヒロミさん・・・僕に命令するなんて、自分の立場を分かって無いようですね。さっきも言ったはず・・・あなたは、僕にとってのパンスト奴隷。僕に必ず服従しなければなりません」
彼は、行為を止めて話した。
もちろん私にとっては、飢えた犬がお預けを食う様に、残酷な行為だった。
私は早く、お腹一杯に満たされたかった。
「わ・・分かったわ・・・タケルさんの言う事だったら何でも聞くわ・・・だからお願い・・・早く私を楽にして・・・はあ・・・はあ・・・・・・」
快楽に飢えた犬は、どんな芸を仕込まれようとも、餌を与えてもらう為におねだりをした。
「言いましてね?・・・ヒロミさん・・・何でも言う事を聞くって・・・ふふ・・・・・」
意地悪な飼い主は、不敵な笑みを浮かべて、飢えた犬に語りかけた。
「ええ・・・分かってるわ・・・だからお願い・・・はあ・・・はあ・・・・・・」
「ふふ・・・それじゃあ手始めに、ヒロミさんの過去に少し触れてみましょうか?。僕の知らない、ヒロミさんの事とか・・・・・・」
「はあ・・・はあ・・・ど・・どうしてこんな時に聞くの?・・・私は早くお願いしたいのに・・・・・・・」
「まあ・・・そんなに焦らないで下さいよ。時間はたっぷりとありますから・・・ふふ・・・・・。それとも早く帰らないと家族に怪しまれますか?。確か息子さんは、一人暮らしの大学生で家を出てますよね?・・・そして、娘さんはまだ高校生で・・・・・・」
メールの段階で、彼に家族構成などは簡単に伝えてあった。
「そ・・そうよ・・・・・・。お願い・・・こんな時に家族の話はやめて」
「そうですよね・・・子供達が勉学に励んでるのに・・・母親は若い男を連れて、真昼間からホテルのベッドの上・・・これを知ったら・・・さぞや子供達は嘆くでしょうね・・・ふふ・・・・・・」
この時、部屋の時計は昼の12時半を回ろうとしていた。
「もしかして・・・脅してるつもりなの!?」
彼の言葉に、私は血の気が引く思いがした。
例え彼の言いなりにされたとしても、今の私の姿は道徳に外れたもの。
これが、世間に知れたとなれば、家族をも巻き込むのは間違い無かった。
私の男関係で、子供達の将来が全て闇に鎖される事になるのだ。
しかも、パンストプレイなる世間様にも顔向けできないような破廉恥な行為を、若い男にたぶらかされた母親として・・・・・・・。
「別に脅してるつもりはありませんよ。僕は、ヒロミさんの事を知りたいだけと言ったはず・・・・・・・。それに僕だって・・・オバさんに全裸でパンストだけ履かせてセックスしてるなんて、他の人に知れたら、たまったものじゃありませんよ。まあ・・・痛み分けって奴ですね」
確かに彼の言う通りなのだが、今一つ府に落ちないところもあった。
この時点での、私が背負うリスクとしては家族の事になる分けだが、まだ身の回りの事が不明な彼に関しては、まるで見当すらつかなかった。
それでも、お互い五分のリスクとして受け止めてる彼に対して、私も安堵する所もあった。
ここで私は、気持ちを取り戻したかに見えたが、彼のサディスティックな言動に、自分が傷ついている事に気付いた。
すでに、マゾヒスティックを脱いでいた私にとっては、彼に『オバさん』呼ばわりをされる事は、もっともキツイ言葉だった。
行為の最中なら、彼のサディズムの中での言動と思えば耐える事が出来たが、この時は間違い無く、素の気持ちで私に本音をぶつけていた。
初めに交わした、恋人同士のような営みを思い出すと、今は侮辱的な言葉でなじられてる自分が惨めに思えた。
初めは身体目的だったにしろ、美青年の彼を目の前にして甘美なセックスの憧れを抱いた気持ちは、まだ捨て切れずにいた。
「それじゃあ何なの?・・・さっきから私の家族の事ばかり聞いてきて・・・もうお願いだからベッドの上では辞めて・・・・・・・。私だって、こう見えてもただの女・・・だから・・・ベッドの上では、私だけを見て欲しいの!・・・私だけを愛して欲しいの!。タケルさんに、いくらオバさん呼ばわりされても構わない・・・パンストだっていくらでも履いてあげる・・・でも・・・こんな時に・・・こんな時に家族の話はしないで!」