お嫁さんはどっち?-3
撫で撫で、と何度も彩花の頭を撫でる、
「わ、分かったよ。一緒に勉強すればいいんだろ」
どうやら彩花が折れてくれたようだ。これで、二人が喧嘩をすることは――
「む〜ズルいです。私もりっくんに頭を撫でられたいです……」
今度は彩菜が嫉妬を……って、これって根本的な解決になってないじゃないか。
「さ、さぁ早く彩花の部屋に行こうぜ!」
話しがややこしくなる前に行動するのが一番だろ。無理やり会話を切って彩花の部屋に移動するように促す。
「うぅ……今回はまぁ、許しますけど……」
頬を膨らませたまま納得のいっていないといった表情で許すと言った彩菜。全然納得してないじゃないかと突っ込みたいが、ここは我慢しておこう。やぶ蛇すぎるからな。
「勉強道具よし。お茶よし。お菓子よし。じゃ、勉強を開始しよう!」
「おい待て。色々と不要な物があるだろ」
今、この場において必要なのは勉強道具だけだろ。お茶もお菓子も、途中の休憩時間の時でいいだろ。絶対に今必要な物ではない。
「まったく陸は分かってないな」
「なに……?」
呆れ顔で彩花が溜息を吐く。ここまで呆れた顔をされるとムカつくな。俺は正論しか言っていないはずなんだけどな。
「勉強には水分補給が必要だし、糖分だって必要なんだ」
「それは分からないでもないが、今この場には必要ないよな?」
後できちんと休憩時間を設けるから、その時でいいだろ。目の前にお茶やお菓子があると彩花のことだから、勉強そっちのけでお菓子を食べたりするだろ。
それだと意味がない。勉強を教えても実にならないだろう。
「あ、彩菜だってお茶とお菓子が必要だよな? な?」
彩菜に助けを求める彩花。少し前まで口喧嘩をしていたような気がするんだが、そんなことなどなかったかのような接し方だ。
「……必要ありません。と言いたいですが、彩花の言うことも一理ありますね」
彩菜も普通に彩花の味方をしているし、女っていうのはいまいち分からないな。
それとも、この二人が特別変なのだろうか?
「りっくん」「陸……」
「……はぁ。分かったよ。お茶もお菓子も認めてやるよ」
二人にジッと見つめられて、その視線を跳ね除けるなんて出来るわけがない。
今回はガッツリと勉強を教えるのではなくて、ゆったりと軽めに勉強を教える感じになりそうだな。
まぁ、きっと彩花は初めからそのつもりだったのだろうけどな。
「じゃあ、とりあえず始めるか」
「はい」
「おー」
こうして三人の勉強会が始まった……のだが――
「ねぇねぇ陸。ここが分かんないんだけど」
「ねぇ、りっくん。ここが分からないのですが……」
三人、横一列に並んで机に向かっている。詳しく言うと、俺の両隣に彩菜と彩花が居るわけなんだが、正直二人がピッチリとくっついてきて狭い。
しかも、ただくっついてくるだけじゃなくて、二人とも俺の腕に自分の腕を絡めたり、胸を押し付けてきたりしている。
明らかに勉強しにくいだろって格好だ。
「陸。もっと分かり易く教えてくれよ」
「りっくん。こちらはどうなるのですか?」
二人は気にせず勉強をしている。妙に意識しているのは、もしかしたら俺だけなのだろうか?
そんな錯覚に陥りそうになるよ。しかし、それにしてもだ――
「なぁ陸……」
ふに。ふに。
「ねぇ……りっくん」
ぷにゅ。ぷにゅ。
「…………」
意図的に押し付けられる二人の柔らかな胸。両腕に胸を当てられて集中しろって、どんな罰ゲームだよ! 全然集中なんか出来ねぇよ!
「ふ、二人とも……胸が当たっているぞ……」
黙っていても状況は変わらないので、一か八か言ってみる。
「陸は何、バカなこと言ってんだよ」
「これは……わざと当ててるんですよ♪」
更に強く押し付けられる二人の胸。ま、拙い……これは非常に拙い状況だ。
「きゅ、休憩にしよう!」
わざとらしく大きな声を出して休憩を宣言する。このままだと俺の理性が色々と大変なことになりそうなので、ブレイクタイムを設ける。
これで二人が離れてくれたら俺の理性もなんとか回復が出来そうだ。
「休憩ですか。私は異論はないですよ」
「あたしも休憩でいい。そろそろ頭が疲れてきたし」
頭が疲れるほど勉強をしていたつもりはないが、二人が離れてくれるのなら、どうでもいい。
そう。二人が離れてくれたら――ぶっ!?
「ん〜正座をして勉強をするのは疲れますね……」
彩菜が正座を崩し、楽な体勢を取る。楽な体勢を取る。それは休憩時間なのだから問題はない。
問題はないのだが……どういう神様の悪戯なのか、彩菜のスカートが絶妙な捲れ方をしていて、太ももが露になっている。
あとすこしスカートを動かせば下着が見えてしまう。そんなギリギリのところまで捲れているのだ。
「りっくん、どうかしましたか?」