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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第8話-8


「今日も一日、おつかれさまでした!」
 モップを片手にしたエプロン姿の桜子である。ときめくなよ、諸君。
 本日の蓬莱亭の営業が終了し、暖簾を下げ、店内の床を水葺きして、ゴミをまとめて所定の場所に集めて、一日がようやく終わった。
「お疲れ様、桜子」
 厨房の後片付けは、由梨が済ませた。そして、この場には居ないが、龍介は奥に下がって帳簿を開いていた。意外な事に、蓬莱亭の経理関係は龍介が担っている。そして、これまた意外な事に、数字に関して龍介はとても几帳面である。
「お風呂に入って、今日はもう休んでしまいなさいな」
「うん。ありがとう、お姉ちゃん」
 恋人である大和のアパートで、ほとんど同棲状態となっている桜子だが、彼の意向を受ける形で、試合のある1週間前は、こうして実家に戻っている。
 “戻っている”というのもおかしな話だが、由梨と龍介は、母親が海外で単身赴任をしているため、今は一人暮らしになっているという大和の状況を慮り、また、桜子が将来きちんと主婦として家事をこなせるようにするための“花嫁修業”も兼ねて、二人の“同棲”を認めていたし、勧めてもいた。
 もちろん、二人が考えている、妹・桜子の仮想“花婿”は、大和である。
 2日後の試合を控えた今、桜子は蓬莱亭で起居しているから、勝手知ったる自分の庭のように、洗面所に至るや素早く衣服を脱いで洗濯機にそれらを詰め込み、鼻歌交じりで風呂場の住人となった。
 ちなみに、洗濯機のある洗面所と風呂場とは、少しだけ離れた場所にある。故に、わずかとはいえ、廊下を歩く必要がある。
 つまり桜子は、その廊下を素っ裸のまま往来したのだ。大和のアパートでは、ここまで豪快なことは出来ない。
「はぁ〜、極楽極楽〜♪」
 ざば、と豪快に湯船に浸かり、両手ですくったお湯で顔をひと拭きする。手ぬぐいを頭に載せ、今度は気持ちよさそうに“ババンババン”と、歌を歌っていた。
「今日も、いい汗かいたなぁ〜♪」
 なんというか“おっさん”のようである。大柄であるが、基本的には美少女なのだから、もう少ししおらしくしたほうが良いと思うのだが…。
「どっこいしょ」
 湯船から身を挙げるときの掛け声を聞けば、本人にそのつもりがないことは瞭然であった。
「♪〜♪〜♪」
 自家製へちまタワシで、身体の隅々をマッサージするように揉み擦る。使用している石鹸は、残り油を利用したこれまた自家製のものだ。
「ここは、念入りにしないとね〜♪」
 手術痕が痛々しく残る、左足首。バレーボールの試合中に断裂してしまったアキレス腱は、これからもずっと付き合っていかなければならない、彼女の古傷である。
「……っ」
 左足首のマッサージ。少し前に、大和から受けたマッサージの感触。
「ん……」
 風呂場に入る度に、その感触を思い出してしまい、桜子はどうしても、高ぶってしまう自分の身体を、抑えられなくなっていた。


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