隠し事-4
「俺の事喋ったら……あの奴隷、殺すからな……」
スランはカリーの耳元で囁くとスッと姿を消す。
腰砕けて再び床に座り込んだカリーは耳に残るスランの冷たい声音に青くなった。
暗殺者としての格が違う……スランはカリーより遥かに強い。
逆らったらスランは容赦なくポロを殺すだろう……カリーに、ポロを守る事は出来ない。
(ホント……悔しい……)
カリーは唇を噛んで自分の無力さを呪った。
「カリー?」
暫くするとゼインが遠慮がちに洗面所のドアをノックした。
「どうだ?」
そっとドアを開けて覗き込んだゼインに、カリーは弱々しい笑顔を向ける。
「ん……吐いたら楽になったよぉ?」
薬の影響も治まり、気分が良くなったのは本当だ。
「そっか、ベットに運ぼうか?」
ゼインはカリーの返事を待たずに彼女を抱き上げた。
カリーは素直にゼインの首に腕を回して体を支える。
「何か甘えてねぇ?」
「調子悪い時ぐらい甘えても良いじゃぁん?」
「ん〜…ああ……別に良いけどな……」
歯切れ悪く答えながらカリーをベットに降ろしたゼインは、悪戯っ子の笑顔を見せた。
「甘えられるとヤリたくなる」
キュンとする可愛いゼインの笑顔に、カリーは困ったように笑うとゼインの額を指でビシッ弾く。
「夜にしてよねぇ〜」
昼間っからサカるな、といつものように言うとゼインは喉の奥で笑った。
「夜なら良いんだな?今の内に体力回復しとけよ?」
ゼインはカリーに布団を被せて部屋を出ていく。
それを眺めていたカリーは頭から布団を被って悶えた。
(可愛いぃ〜っ!)
あの悪戯っ子のような笑顔が大好きで堪らない。
(ずっと一緒に居れたらいいのに)
しかし、カリーは暗殺者として沢山の命を奪ってきた……別に後悔してないし今でも必要とあれば躊躇無く人の命を奪えるが……自分は余りにも血に汚れ過ぎている。
スランにもバレた事だし、潮時なのかもしれない。
時間が無い事に気づいたカリーは起き上がって身支度をすると、ゼインの後を追いかけた。
カリーが合流すると、ゼインの予想通り騒がしくなった。
カリーはポロを連れ回して船のあちこちを見に行く。
「おい、病み上がり。無理すんな」
ゼインはカリーの襟首を捕まえて忠告した。
「やあん。だって午前中無駄にしちゃったんだもん」
「だからってなぁ」
いつもの言い合いが始まり、ポロは2人から少し離れる。
始めは2人が喧嘩する度にハラハラしたが、もう慣れた。
ある意味コミュニケーションをとっているのだ……邪魔してはいけない。
「お嬢さん♪」
そのポロに2人組の男が話かけてきた。