出会いのきっかけは一匹の猫でした-3
「…とりあえず…俺はこいつらを埋めてくる」
「はい。この子は私が見ておきます」
ダンボールに入っていた猫をその場に置き、彼は中のほかの猫たちを埋めに行った。
するとどこからか小さな柴犬がやってくる。
そういえば彼は「一匹飼っている」と言っていた。
あの一匹は猫ではなく犬のことだったようだ。
犬は私を警戒するように見て、遠くから様子を伺っていた。
ふと子猫が私の手から飛び降り犬のほうに走っていく。
そして説得するように(?)犬に向かって鳴きはじめる。犬も納得したのか警戒を解いてくれた。さっそく猫は犬と仲良くなったようだ。
そんな和やかな光景を眺めていると、彼が戻ってきた。
「ただいま〜って…お?ポチ、なんだよ…もう仲良くなった?」
「ワンッ」
彼が帰って来ると、子猫はポチと呼ばれた犬の後ろに隠れる。
「この人は悪い人じゃないよ」というように、ポチは子猫を舐めた。
それを見て彼が猫に近寄ると、猫は威嚇するように毛を逆立てた。
そして再び私の元へ戻ってくる。
「俺…嫌われてるなぁ」
「大丈夫ですよ、きっと慣れます」
と私がっ微笑むと彼は微笑み返した。なぜかドキッとする。
慌てて視線をそらし、猫の背中をなでた。
「…ほんと、あんたにはなついてるよなぁ…」
「そうですね」
「…よかったらこれからも遊びに来てやってくれないか?こいつも喜ぶだろうし」
「え?…えと…いいんですか?」
「うん、あんたが毎日来てくれたらいつしかこいつも警戒を解いてくれそうだし」
そういって笑う彼。この時は本当に、その意味だけで言っていたのだろう。
下心もまったく感じなかった。
「ありがとうございます」
「こちらこそ。近所に友達が居なくて寂しかったからなぁ…えっと、あ、そういやまだ名前聞いてなかった…えと」
「瑠奈です。月詠 瑠奈」
「瑠奈ちゃんか。俺は天野 蓮。よろしくな」
「はい」