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『T-R-A-P』
【若奥さん 官能小説】

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『T-R-A-P』-1

 僕の隣で、妻が静かに寝息を立てていた……枕元の時計を見ると、午前一時半……

僕は高まる鼓動を押さえつつ、妻の携帯電話に、そっと手を伸ばしていた……

布団の中に潜り込み、音を立てない様に、そっとピンク色のそれを開くと……液晶から放たれた光で、真っ暗な空間に明かりが灯された……

震える指先で、電話帳を開き、目的の名前を呼び出す……『河本涼子』……僕は、ゴクッと空唾を飲み込み、赤外線通信で彼女のデーターを、自分の携帯電話に転送した……

僕が必要としていたのは、涼子のメールアドレス……目的の物以外を消去すると、僕は涼子の事を思い描きながら、眠りに就いた……

 涼子は、妻と親しくしており、同じマンションの五階に住んでいる……旦那さんとの二人暮らし……実際の年令より、ずっと若く見え、大きな瞳と笑顔が印象的な、男好きのする中々の美人であり、僕の好みのタイプである……


 次の日の夜……僕は、ある行動をとっていた……ほんの軽いイタズラのつもりであった……

僕は、携帯電話でホームページを作っている……猥褻な文章を書いては、垂れ流すアダルトサイト……勿論、これが本業ではないし、家族にも内緒……コンテンツは、自作の稚拙な文章の羅列であった……

軽いイタズラとは……そのホームページの私書箱から、涼子にこんな内容のメールを送信する事……

「感想のメール、ありがとうございます。私の駄文に、お褒めの言葉を頂き光栄です。またエッチな気分になった時、読みに来て下さいね。」

 涼子からホームページの感想のメールが届いた訳ではない……感想メールの返信を装ったメール……宣伝メール等で使い古された陳腐な罠であり、読まずに消去される運命であろうが……私書箱から送信したメールには、ホームページのURLが記載される……もしかしたら、涼子がホームページにアクセスし、僕の書いた猥褻な文章を読み耽り……眉を歪ませながら、指先をパンティーの中に潜り込ませるかも知れない……

僕は、涼子のそんな艶姿を妄想しながら、妻の寝静まった夜更けのトイレの中で、肉棒を扱き上げていた……


 涼子にメールを送信してから二日後……僕の携帯に、私書箱経由のメールが届いた……涼子からのメールだった……少し驚きながらも、早速内容に目を通す……

『はじめまして。先日メールが届きましたが、宛先が間違っているみたいですよ。私、メール送っていないので……』

脳裏に新たなストーリーが展開していた……僕は直ぐに涼子にメールを返信した……

「ごめんなさいm(__)m間違えてしまったのですね……ページは御覧になりましたか?気分を害させてしまったのでは……ご迷惑を、おかけしましたm(__)m」

『内緒で、ページ見ちゃいました……ちょっと興奮しちゃったかも……』

涼子は、僕の文章を読んでいた……僕は平静を装いながら、再びメールを返信した……


 その日から、僕は架空の人格を形成し、涼子とメールを交わす様になっていた……メールの相手である官能小説サイトの管理人が、僕である事など、涼子は知る由もない……

日に一度か二度の、のんびりとしたメール交換……始めのうちは、当たり障りの無い内容のメールであったが……素人とは言っても僕は官能作家……次第に、ゆっくりと過激な内容に導いていく……焦りは禁物である……


 メールのやり取りをする様になって、二ヵ月程すると……その内容はかなりハードなものになっていた……初体験の事や、夫婦生活の事、夫に対する不満や、一人エッチの事まで……終には、涼子は僕にあられもない姿の写真まで送信してくれる様になっていた……

「今度の週末……涼子さんの住んでいる傍まで、出張があるんだけど……会えないよねぇ……」

『実際に会うの?恥ずかしいなぁ……うちの旦那も出張で居ないけど……エッチな事しようと思ってるでしょ』

「エッチな事……しちゃうかもね(笑)」

粘った挙げ句に、僕は涼子と実際に会う約束を取り付けていた……


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