〈猛る瞳と擬態する者達〉-10
『……あの巨乳ちゃんと文乃は強かったなあ?あと少しで全滅だったよ』
「………」
例え檻の中に収められたとしても、猛獣は牙を剥いて誇りを失う事はない。
麻里子もまた、一切の攻撃手段を失われても、その瞳は炎を燃やし続けている。それは文乃や美津紀など足元にも及ばぬ迫力に満ち、その眼光だけで恐れを抱かせるものだった。
『文乃ってのはお友達かな?格好つけてたクセに直ぐにマ〇汁垂らしやがって。全員でマワしてやったらイキまくって小便まで漏らしたぜ?』
「……黙れテメェ…」
麻里子の瞳はギョロリと剥かれ、その檻の中で巨大化していくような錯覚すら起こさせた。
全身から怒りのオーラが発散されているようだ。
『向こうの国じゃ木に吊されてよぉ、ろくに洗ってねえ汚えチ〇ポでオマ〇コもケツ穴も……』
「黙れっつってんだろ!!この野郎!!!」
専務は麻里子の悔しさが楽しいのだ。
信じていた人に騙され、勝利の確信は空虚なものだと思い知らされた屈辱……ただの一発も殴れず、自分から鬼畜達の掌に飛び込んで握り潰されたのだ。
鍛え上げられた肉体は麻縄にも勝てず、ましてや鉄で出来た檻になど敵うはずがない。
『美津紀ちゃんは取引先のクソオヤジが気に入ってなあ……子供を産ませるって張りきってたよ……今も“種付け”に精を出し……』
「だ、黙れって……その口、二度と利けなくしてやる……」
専務は、絶対に勝てなかったはずの長女・麻里子を仕留められた事の安堵と、それが助けるべき人の拳銃だった事が可笑しくて堪らなかった。
怒りの度合いが増していき、その威圧感が増幅していく程に楽しくなっていく。それは末っ子の夏帆のレイプシーンの映像を見せつけながら、その様を罵倒しながら長女たる“あおい”を凌辱した時と同じような悦び……背徳と言う言葉では表せない、悪鬼にしか解らぬ快楽なのだろう。
『……麻里子お姉ちゃんは大事な商品だからよ、向こうに着くまで大切に扱ってやるよ……その代わりに…?』
「や…やあぁ!!お姉ちゃぁん!!!」
「!!!!」
専務は檻の中から一人の少女を引きずり出すと、麻里子の目の前に押し倒した。黒髪のツインテールの、クリクリとした瞳のアヒルのような唇をした少女だ。
かなり幼い顔や身長からすると、中学生か高校一年生くらいだろう。
床にへたり込んだまま、取り囲む男達を怯えた瞳で見回していた。