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たねびとの歌V
【ファンタジー 官能小説】

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レイ-1


わしはただの百姓の爺いだ。松下ヒデオという平凡な名前だ。
女房にも死なれ、田畑を売り払って都会に出て来たが、驚いた。
悪い病気が流行って、殆どの男がインポとか無精子病にかかってしまったそうだ。
で、下半身が元気な男は国家が保護して受精補助員という身分を与えられるのだそうだ。
わしは辛うじて受精補助員にされずに済んだが、行政取引の結果、区専属の嘱託補助員にさせられてしまったんだ。
まあそういう訳で、今は郊外で畑仕事をしながら月一回の種付け仕事を請け負っている。
種付けと言っても牛や馬のではない。
れっきとした人間の娘っ子とセックスをして国民の人口を増やすのに一役買っているんだ。
やって来る娘っ子は綺麗な可愛い子ばっかりだが、わしにも苦手というのがあってな。今回はそういう場合のことも幾つか紹介しようと思う。

区役所の立花さんから電話が来た。
「明日、また受精補助をお願いしたいのですが、今回は区外から内密の依頼がありまして……上流社会の方だそうです。
社交界の花で政財界にも通じている女性だと言います」
「ちょっと待って下さい。
わしは農家の爺いだし、そんな高級な人を相手にするような品格も持っていませんよ。
そういう方なら正規の補助員の方がいくらでもいるでしょうに」
「国家資格を持った受精補助員とDNAの相性が良くないのです。
で、この区が順調に受精資格者をさばいているのに目をつけられまして、国会議員を通して圧力をかけてきたのです。
このことに目をつぶることを条件に枠外の授精を受け入れるようにとのことで……」
「そういうのがこれからどんどん増えるってことはありませんか?」
「大丈夫です。確かな筋ですから。」
「それなら良いですけど。私のことは知ってるんでしょうね。
ただの爺さんだってこと。口の利き方だって知りませんよ」
「大丈夫……だと思います。たぶん……種さえもらえば向こうは良いはずですから」
「怖い付添い人とか一緒について来ないでしょうね」
「それは念を押しましたから大丈夫です」
そういう会話が交わされて今日になった。
艶っぽい声がしたので、玄関に出た。
一人の女性が立っていた。見たことがないほど色っぽい美人だった。
古代中国の後宮に傾城と言われた超美人がいたという話だが、きっとこんな感じなんだろうと思った。
その眼差しで微笑めば国一つも差し出したくなるという、その話を思い出した。
身につけているものも頭のてっぺんからつま先までいかにも高級そうで、センスの高い感じのものだ。
と言ってもわしにはそれを見分ける目はないんだが。
ほのかな香水の匂いがしていた。その芳しい匂いだけで恍惚とした心持ちになる。
「あのう、松下ヒデオさんご本人ですね。私、レイと言います。
きょうは宜しくお願いします」
「はあ……レイさんで……よろしく」
「上がってもよろしいですか?」
「あっ、どうぞ。汚いところですが」
上がると、わしとレイさんは向かい合って座って……そのまま時間が少し経った。
年の頃は20代後半だろうか?
 だが社交界で一流の人たちとも交流しているのだと思えば緊張する。
ましてこの女性とオメコをするなんて、イメージが湧かない。
この女性の前でわしが発情してチンポを立てたら、なんか心の中で軽蔑されそうで恐ろしい。
わしはだんだん目を伏せて、何を言おうか考えても何も思いつかず頭の中が真っ白になって来た。
するとレイさんはクスッと笑ってわしに膝を近づけて来た。
「ヒデオさん、私のことをお気に召しませんか?」
「いえ……お気に召すとか召さないとかそんなことじゃなくて」
「種付け……して頂けます?」
小首を傾げて艶やかな笑みを見せられて、わしはまたゾクゾクッとした。
種付け……そういう露骨な言葉を言われて、わしは卑猥なことが頭に浮かび首を振った。
わしはなんて失礼なことを考えてるんだろう。
「ああ、すみません。厭らしいこと考えてしまいました」
するとレイさんは口に手を当てプッと吹き出した。
「厭らしいこと……どうぞ考えて下さい。それでなきゃ種付けできないじゃありませんか」
レイさんの耳の大きなイヤリングが揺れた。
レイさんはわしの手を取って自分の豊かな胸元に当てた。
「さあ、どうぞ自由に私を奪ってください」
どうぞ自由にと言われても、なんかわしが王女様をレイプする山賊みたいで惨めになってしまうのだ。
そういう設定で興奮する時だってあるが、今回はどうも駄目なんだ。
なんか人として貫禄負けしてるみたいな、そんな変な気分なんだ。
これまでも何人も娘っ子を抱いて来たのに、わしはどうして駄目なんだろう?
そうだ。セレブのお嬢さまともまぐわったことだってあったじゃないか。
そう考えても、どこから始めて良いのか全然わからんのだ。
 


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