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ゼビア・ズ・ショートストーリー
【ファンタジー その他小説】

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烏合の衆-1

「絶対に嫌です!!」

 西の大陸、魔法大国ゼビアの騎士団詰所で直立不動の姿勢ながら自分の意見を譲らない男が居た。
 彼の名はサク=ファウラー、30歳。
 金髪碧眼、スラッと高い身長に無駄な肉の無い体……騎士団きってのイケメンだ。

「しゃあねぇだろ!俺ぁ本格的に次期国王代理っつうワケわかんねぇ役職やんなきゃいけねぇんだよ!」

 イケメン、サクに怒鳴り返している男は自分で言っている通り、ゼビア次期国王代理のアース=サクライ、もうすぐ27歳。
 こっちは黒髪金目、右目は大きく傷があり閉じているがワイルド系のイケメンだ。
 魔法使い最高ランクの魔導師でもあり、ゼビア騎士団の隊長もしているアースだが、この度ゼビア王妃のイズミが懐妊したという事で本格的に城詰めの仕事になる。
 なので今まで隊長としてまとめてきたアース隊を、ナンバー2のサクが引き継げと言ったのだがキッパリ断られたのだ。

「隊長が休職していた2年間、私は隊長代理を勤めましたが……あんなのは真っ平です!」

 アース隊は曲者揃い……元地元のチンピラや元冒険者……はては元犯罪者などを集めて作られた異色のチームだ。
 そいつらがしでかす事と言ったらもう……ちょっとした争い事を喧嘩両成敗とか言って大きくするわ、街に下りてきた火蜥蜴を退治した後こっそりと売りさばくわ、魔物の卵を試しに食べてみようとか言って孵化させてしまい大騒ぎになるわ……その度に頭を下げて回り、尻拭いするのはサクなのだ。

「それは……アースが居っても変わらんのではないか?」

 騎士団長スオウは椅子に座ったままポツリと呟く。
 大体、騒ぎの中心になっているのは隊長であるアースだ。

「隊長は騒ぎを起こしてもご自分で処理出来ますけどね!私は魔力も持っていない普通の人間なんです!絶対に嫌です!」

 サクは頑として譲らず、スオウは困った顔をアースに向けた。
 変なチームを作ったアースに責任を取れと言っているらしい。

「次期国王代理の方を辞めるってのは……」

「却下」

「そうっスよねぇ」

 アース的には騎士団隊長の地位が一番好きなのだが、アースの妻は島国ファンの姫なので次期国王代理の地位を捨てるとファン側から離婚しろと言われる可能性がある。
 それだけはどうしても避けたい。

「しゃあねぇか……奴らをまとめれる奴なんか他に居ねぇしな……解散して各隊にバラけさせっか」

 アースの提案にスオウは鷹揚に頷き、サクはホッとしながらもチクリとした胸の痛みを覚えたのだった。


「まあ、それじゃあアース隊は解散ですの?」

 自宅に帰ったサクの話を聞いた妻、リムは食後のお茶を入れながら残念そうに言う。


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