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恋に変わるとき
【青春 恋愛小説】

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ロスト・バージン!?-9

しかし画面には、無情にも歌い出しの歌詞が表示される。


あー、ダメか。全然話を聞いてくれない。


ダンダンダンダンッと4回ドラムが鳴った所で歌が始まる……と思っていたら、臼井陽介は一向に歌を歌う素振りを見せなかった。


「…………?」


不思議そうに臼井陽介を見てると、彼はマイクを持ったまま、


「……このまま一人にさせたくねえんだよ」


と、エコーのかかった声を響かせた。


「え……」


「一人になったら、お前絶対ずっと泣いてるだろ? それ想像したら、このまま帰したくなかったんだ。

こんな所でたかが一泊したって、お前の悲しい気持ちを全部取り除いてやれねえってのはわかってる。

……それでも、少しでも気晴らしになってくれるんなら、そばにいてやりてえって思ったんだ」


そこまで言った奴の顔は、お酒でも飲んだみたいに真っ赤になっていたから、ホントに酔っ払ってるんじゃないかと思ったほどだ。


でも、その赤みはあたしにまで伝染していたから、お酒のせいじゃなくて何かのウイルスだったかもしれない。


そのウイルスは、あたしの身体を熱くさせ、心臓の鼓動を速め、胸を苦しくさせる、とても厄介なものだった。


黙り込んだあたし達とは対照的な、ベースがうねるリズムライン。


ラブソングでもなんでもないこの歌を選んだのは、失恋したばかりのあたしを気遣ってくれたのかな。


あたしは、目を細めてからマイクを持って臼井陽介に叫んだ。


「臼井くん、サビ始まるよ!」


あたしの言葉に我に返った彼は、少し出遅れてからようやく歌を歌い始めた。







結構上手な歌声を披露した彼は、間奏に入った途端、マイクを使ってあたしに話しかけた。


「それじゃ、今日は寝ないで朝まで歌いまくるぞ!」


「おおー!」


「隣の部屋の喘ぎ声に負けねえくらいデカイ声で歌うぞ!」


「おおー!」


ライブみたいなノリでふざけ合ううちに、あたしはいつの間にか大口開けて笑っていた。


そんなあたしを見て、彼は嬉しそうに笑う。


ああ、その笑顔がまたあたしを変な気持ちにさせる。


苦しい胸を押さえながら、あたしがジッと彼を見てると、奴はニッと白い歯を見せ、


「福原恵はお色気全開で頑張るぞ!」


と、大声で叫んだ。


……お色気??


彼を見れば、ニヤニヤしながらあたしの身体を黙って指差している。


あたしがなんとなしに自分の胸元を見下ろした瞬間、あたしは
今の自分の姿に気付いて固まってしまった。


ショーツにキャミソール。その中はさっきコイツに外されたままのブラジャーが頼りなさげにぶら下がっていて。


コイツのニヤケた顔があたしの身体を見ていたことに気付いた時、あたしはマイクを使っていた臼井陽介よりも遥かにデカイ声で、






「うぎゃあああああ!!!!」







と、悲鳴を上げてしまった。


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