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アンバランス×トリップ
【ファンタジー 官能小説】

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望み-7

「仕事だからな」

 怒る気が失せてぶっきらぼうに答えたゼインに女性は鞄をひとつ投げる。
 それを受け取ったゼインは何事かと女性に片眉を上げて見せた。

「仕事ついでにもうひとつ!隣街にもワクチンを届けてくれない?勿論、追加報酬あるわよ」

 報酬があるなら文句は無い……ゼインは片手をあげて了承の合図を送る。

「良かった!南に5キロ先にあるマルーザの街よ!よろしくね!」

 女性は目的地を伝えると馬を操って立ち去ってしまった。
 5キロなら往復で1時間もかからない……ゼインはカリー達に伝えずに行く事にした。

 その頃、カリーとポロは街の食堂兼宿屋でゼインを待っていた。

「へぇ……子供にしか伝染しないんだ?」

 宿屋のおばさん相手に情報収集するカリーの横で、ポロはミルクティーを啜る。

「子供っていうか、体力が無い人だね……普通は大丈夫なんだけど、今年はここら一帯不作だったからさぁ……」

 おばさんはカリーの向かい側の椅子で、お盆を抱えたまま深いため息をついた。

「ポロ、大丈夫かな?」

 多少、体力はついてきたが長い奴隷生活のせいでポロの体は脆い。
 カリーは横に座るポロに視線を移して彼女の頭を撫でる。

「空気感染はしないから患者に近づかなきゃ大丈夫だよ」

「ふぅん」

 それを聞いて安心したカリーは自分も炭酸水を飲んだ。

 暫く話をしたおばさんは、仕事があるからと奥に引っ込む。
 カリーは暇なので手持ちの道具の手入れを始めた。
 カリーのウエストポーチは魔法のポーチ、とポロは思っている。
 いったいどうやったらこんなに沢山の道具が、こんな小さなポーチに収まるのか不思議でならない。
 興味深気に覗いてくるポロに、カリーは道具をひとつひとつ説明してやった。

「これはぁワイヤー。さっき使ったの見てたでしょ?ここを引くと自動で戻るの。で、これは鍵を開ける道具。こっちが……」

 一通り説明を聞いたポロは、これも道具なのかとカリーのシュシュを指差して首を傾げる。
 ファッションが変わってもこれだけはいつも身につけているので、何か道具になるのかと思ったのだ。

「ああ……これはねぇ……ゼインがくれたの」

 カリーは少しはにかんで答える。
 出会ったばかりの頃、リボンで髪を飾っていたカリーに「ヒラヒラして鬱陶しい」と、ゼインが露店で買ってきた。

「他にもヒラヒラしてるんだけどね、リボンは嫌いみたい……変な奴よねぇ?」

 嬉しそうに文句を言いながらカリーは左手のシュシュに唇をつける。


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