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アンバランス×トリップ
【ファンタジー 官能小説】

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望み-8

(ゼインが好き?)

 ポロは口パクとジェスチャーでカリーに聞く。
 それはちゃんとカリーに伝わったらしく、彼女は困ったように笑った。

「ゼインにはね……好きな人がいるんだよねぇ」

 3年近く前に一緒に旅をした女性が居た。
 1年ぐらいの間だったがゼインが惹かれていくのが良く分かった……とカリーは話す。

「あ、私がバラしたって言わないでよ?」

 カリーの言葉にポロは肩をすくめた。
 バラしたくても喋れないので無理だ。
 カリーはそれもそうか、と笑いつつ道具をポーチに戻していく。

 ポロはその様子を眺めながら、質問の答えになってない……と思う。
 どう考えてもカリーはゼインの事が好きなんだろう……しかし、そのゼインが好きになった女性というのが彼女にストップをかけている。
 ポロはゼインが好きになったという女性にも興味が湧いたのだった。



ー君はゼロになれますかねえ……

 真っ暗な部屋に不気味な男の声がする。
 目の前には真っ赤な液体が広がっていて、それが自分が吐き出した血だと思うと何でまだ生きているのか不思議だ。

ー君で18人目……期待してますよ?

 血溜まりを踏みしめた足が肩を蹴る。
 ごろりと仰向けに転がされた目に写ったのは丸い窓から覗く銀色の月。

(ゼロ……?ダレ……?)

 不気味な声はブツブツと何か呟きながら、仰向けになった少女の髪を掴んでズルズルと引きずった。

(シニタクナイ)

 少女は引きずられながら虚ろな瞳で月を眺めていた。



「ポロ?」

 呼びかけられて目を開けるとゼインが心配そうな顔で覗き込んでいた。

「大丈夫か?」

 ゼインの冷たい手が額に当てられ、その心地よさにポロは目を閉じる。

「奴隷ん時の夢……か?」

 ポロは目を閉じたまま頷き、ゼインは「そうか」と答えて黙った。

「あれ?おかえり〜遅かったね」

 そこへカリーが戻り、ゼインはさりげなくポロから手を離す。
 少し寂しい感じがしたポロだったが、何でなのか分からないので気にしない事にした。

「どこ行ってたんだよ?」

「ゼインに言われたくな〜い。ゼインこそどこ行ってたのよ?」

「隣街。ワクチン届けてきた」

「ずっるぅい!」

「しょうがねぇだろが!急いでたんだからよっ」

 いつもの言い合いを始めた2人の間でポロはゆっくり体を起こす。

 いつの間に寝てしまったのだろうか……よりによってあんな夢を見るとは……。


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