温泉旅館客室 女将と旦那-2
「ヒッ!」
「あら、ご苦労さま。どうしたの吃驚した顔をして」
女将は麻耶の悲鳴にケツをまくったまま振り向いた。
「毛が…」
麻耶は女将の無毛のワレメを見てさらに驚いた。
「どうしたの?固まっちゃって」
「えっ?あっ、ああ、お、女将さん、み、見えてますよ」
「何が?」
「おまんこが…」
麻耶の顔が真っ赤になった。
「あらやだ!」
女将は慌てて下半身を隠し、照れ笑いを浮かべながら麻耶に聞いた。
「ねえ、まんこを見たついでにウチの人見なかった?」
「(ど、どんなついで…)だ、旦那様なら、蛤の間の前で見かけましたよ」
麻耶によると、事務所の位置から見て美弥子たちの泊る『鮑の間』と反対方向の客室前で見かけたとのことだった。
「蛤の間になんの用事かしら?」
普段から客室のことに関与しない旦那が一体どうしたんだろう?と思いながら、女将がキーボックスを覗いたところ、その客室の鍵が持ち出されていたことがわかった。
女将はニンマリと微笑んだ。せっかく旦那が客室に居るんだから、そこでセックスをしようと考えたのだ。
女将はジロジロと奇異な目で見る麻耶を余所に、イソイソとその客室へ向かって出掛けようとしたが、その麻耶に呼び止められた。
「女将さん、厨房が鮑の間のお食事の時間を聞いてましたけど」
「あっ、忘れてたわ。6時でって言っといてくれる。それと料理には特別に精力が付く物を出してもらって。ええとそれからそのお客様の所に、今すぐアカマムシドリンクを20本ほど届けといて」
「せ、精力と、ア、アカマムシですね」
麻耶はタジタジしながら確認した。
「そうよ、お願いね」
女将は言うだけ言うと、イソイソと事務所を後にした。
「あなた、待っててね。蛤の間でおまんこいっぱいしましょうね」
女将が廊下で言った独り言は、事務所で固まる麻耶にまで届いた。
今まで旦那とは精神的は繋がりを求めていた女将だったが、今ではすっかり体が繋がりを求めている。部屋に向かう間に愛液が溢れてきたのを自覚した女将は、浴衣の裾から指を入れてその状態を確認した。
「ああんビチョビチョ。でもこれなら直ぐに入れてもOKね」
逸る気持ちのまま、ワレメを弄り弄りしながら蛤の間に着いた女将。さっそく扉を開けようとしたが予想に反して鍵が掛っていた。
「あれ?居ないのかな」
女将が念のために持ち出してきたマスターキーで部屋の鍵を開けると、その声が聞こえてきた。
『ああん、あああん』
「へ?」
吃驚した女将は急いで声のする奥の部屋に向かい、襖をそうっと開けて中の様子を覗いて驚いた。
「あああん、いい、もっとお、もっとお、あああん」
部屋の中では愛する旦那が、一番若い仲居の佐代(サヨ)に向かって腰を振っている真っ最中だったのだ。
「あなたたち!何をしてるの」
「ヒーーーー!」
佐代が目を見開いて驚いた。
「うわっ、まずい!」
旦那は慌てて腰を引いて佐代に納まってるモノを抜こうとしたが、その2人の動きを女将は制した。
「動かないで!」
「ち、違うんだ、こ、これは違う」
「何が違うの?」
「え〜っと、え〜っと、そ、そうだ、マ、マッサージだよ、佐代ちゃんが肩が凝ったと言ってたんで、マッサージをしてたんだよ」
女将はさっきの瞳の言い訳を思い出して内心笑ってしまった。
「でも、今あなたがマッサージしてるのは肩と違うじゃないの」
「うううっ」
しばらく色んな言い訳を考えていた旦那だったが、結局、言い訳のできない状況に観念して謝った。
「す、すまん、ついつい出来心で…」
「謝らなくていいのよ」
そんな旦那に対して女将は一言で返した。
女将のその言葉が自分の誠意の無さを指摘していると思った旦那は、佐代との結合を解くと女将に深々と頭を下げた。
「すまん、許してくれ、すまん」
「もういいのよ、あたしは気にしてませんから、もう謝らないで」
その言葉を聞いた旦那が、『愛想を尽かしてもう気にもしない』と女将が言っていると思ってしまったのは無理のないことだった。
そんな旦那の脳裏に体調を崩した先代女将の顔が浮かぶ。
『ええか、あの子は大事にせなアカンで。今時こんな旅館に来てくれるなんて奇特な娘さんやで。絶対に離したらアカンで、わかったな』
説教をするときになぜか関西弁になる東北出身の母の言葉には子供のころから逆らえなかった。
いやそれ以上に旦那は女将の事が好きだったのだ。今度は土下座をしながら謝った。