ダブルデート-3
沙織に連れられて、おそるおそる土橋修達の所へ歩いていき、
「初めまして、石澤です」
と、小さな声で頭を下げた。
すると、土橋修は無愛想に小さく頭を下げ、大山倫平は苦笑いのような引きつった笑顔を浮かべて、「どうも」と小さな声で挨拶してきた。
二人とも微妙な反応なのは、おそらく私が来たことにガッカリしているからだろう。
私が来てから、さっきまでの和気あいあいとした空気が変わったのは明らかだ。
私みたいな人が、この輪の中に入っていいのだろうかという居心地の悪さと、普段よりもさらに可愛い沙織の隣に並んでいる自分が惨めで恥ずかしくて、下を向いていた。
だけど、沙織はそんな私の様子に気づかず、無邪気な笑顔で、
「お腹空いたから、何か食べようよ。あたし、朝から何も食べてこなかったの」
と、私の手を引いてずんずんと店内を歩き出した。
土橋修と大山倫平は、そのすぐ後ろをついてくる。
日曜日だからか、店内は人が多くてガヤガヤ騒がしくて、沙織の声も聞き取りづらいから、お互い大きめの声で話していた、その時。
私達の後ろの方で大山倫平が、
「もっとかわいい子がよかったよな」
と言っているのがはっきり耳に入ってきた。
一瞬でどん底へ突き落とされたような気分になった。
もともと乗り気ではなかったけど、ここに来るまでは生まれて初めて男の子と遊ぶことに、ほんの少しだけ、本当に少しだけワクワクしていたのに。
大山倫平の一言が、私の足場をガラガラと崩していったんだ。
面と向かって言われてもショックだけど、陰で言われた言葉は本音そのものだから、余計辛かった。
土橋修はそれに対して何も言わなかったけど、多分頷いていたと思う。
やっぱりああいうスクールカースト上位のような人達には、私のような地味なブスは受け入れられないのだろう。
鼻の奥がツンと痛んで、涙がジワッと滲んで来たけど、横で楽しそうに店内をキョロキョロしている沙織に気づかれないよう、唾を飲み込むようにして、唇をグッと噛んだ。
そして、私は一つの決意をした。