ダブルデート-2
正面入り口の脇で、すでに沙織、土橋修、大山倫平が楽しげに話をしているのが見えた。
その和気あいあいとした様子を見ると、私なんていらないじゃんと卑屈な気持ちが込み上げてくる。
そして、あの輪の中に入って行くのにすっかり怯んでしまい、なかなか足を踏み出せずにいた。
沙織達から離れた距離でもじもじしていると、土橋修と目が合った。
彼はすぐさま沙織の肩を叩き、私の方を指を差す。
沙織や大山倫平が自分の方に視線を向けると、私は蛇に睨まれた蛙のように固まってしまった。
だけど、こちらの緊張した様子が全く伝わっていないらしく、沙織は飛びっきりの笑顔でこちらに駆け寄ってくる。
「おはよう、桃子」
沙織はデニムのショートパンツに、ふんわりした白いフリルシャツ、黒いニーハイソックスに黒いパンプスと、シンプルながらも清楚な感じの服装だった。
私は、いつも通学用に履いていた薄汚れて白というより灰色がかったスニーカーと、部屋着のような地味な服装、さらには自転車に乗ってきたためボサボサになった頭が急に恥ずかしくなって、
「……おはよ」
と下を向きながらボソッとつぶやいた。
大山倫平もなかなかお洒落な人で、細身の色の濃いジーンズに、高そうな白いロングTシャツ、毛玉一つない黒のカーディガンを羽織っていて、斜め掛けしている小振りの黒いショルダーバッグは、よく雑誌に載ってるブランドのものだった。
髪型は、軽くパーマがかけられたベリーショートで、ほんのり明るい茶髪で清潔感が溢れている。
もともとお洒落が好きなのか、沙織がいるから気合いが入っているのか、あるいはその両方かわからないけど、とにかく制服の時よりかっこよく見えた。
一方土橋修の無頓着な黒髪の短髪は、ギリギリまで寝ていたのだろうか、髪の毛が所々はねていて。
襟ぐりが少したるんだ黒いロングTシャツ、裾が破けて色あせたジーンズ、履きつぶされたスニーカーと、まるでちょっとコンビニに行くかのような格好と寝癖のついた頭が妙にマッチしていて、彼の気の抜けたファッションに、私はなぜかホッとした。