見えない利点-3
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新年パーティーでは帰る際、クジを引いて景品を一つずつもらう。新年最初の運試しといったところか。
景品は一応、大人用と子ども用に分けられてはいるが、中身はお菓子の詰め合わせから金貨まで、実に幅広い。錬金術ギルドの製品も多く入っている。
男女分けはされていないので、男の子にリボンやレースのアクセサリーが当たる事もあるが、交換する相手を探すのも、また楽しみの一つだ。
ちなみに、ヘルマンの箱に入っていたのは、ウォッカの瓶だった。
地上最も強い火酒。
サーフィが絶対に近寄ってはいけない代物だ。
湯浴みを済ませ、夜着へ着替えてから、サーフィも寝室で小箱の包装紙を破く。
「……これは、なんでしょう?」
サーフィの箱には、綺麗な玉が十数個、きちんと並んで入っていた。
どれも親指の爪ほどの大きさで、色はピンクがかった半透明。まるで真珠のネックレスのように繋がっている。
ただし、ネックレスにしては短すぎるし、片側の端に小さな円形の金属がついているだけで、留め具もない。
チラリと、ヘルマンが視線を走らせた。
「あー、それはですね……」
硬質の玉連を、手の中でカチャカチャ鳴らしながら箱をひっくリ返すと、裏側に説明らしきものが書かれているのに気付いた。
読もうとした矢先、横から伸びてきたヘルマンの手が、箱をついと取り上げる。
「あっ」
「ちょっと貸してください」
箱をテーブルの向こう側に押しやり、ヘルマンは続いて玉連も取り上げる。
彼は、夜着ではなかった。
礼服から着替えてはいるが、タイをきっちり閉め、白衣を羽織った日常の服装だ。
普段なら、眠る必要がなくても、サーフィと供に夜着に着替えてベッドに入るのに……
それになぜか、少し機嫌が悪そうだった。
「ねぇ、サーフィ……」
ニッコリと、整った美貌が笑みを形作る。
完璧な、蕩けそうなほど美しい笑みだ。
けれど、これが作り笑いであるのを、なんとなくサーフィはわかってしまう。
片手で腰を抱き寄せられ、耳元で淫靡に囁かれた。
「教えますよ。これの使い方」
そのまま、ベッドに押し倒された。
帯をシュルリと抜き取られ、両手首を頭上で戒められる。
「えっ!?」
想いが通じ合ってからは、こんな風にされた事は一度もなかった。
「あ、あの……んっ!」
戒めた手首を片手で押さえられたまま、噛み付くように口つけられる。
「んんん……っ!」
ヘルマンがなぜこんなに怒っているのか、まるでわからない。
「どうして……?あのっ……わたし……なにか悪い事……」
「……いいえ。君は悪い事など、何一つしていませんよ」
あいかわらず、綺麗な冷たい作り笑いを浮かべたヘルマンが、感情をそぎ落とした声で答える。
そのクセ、視線は咎人を見るように冷たい。
閉じた足の奥に指が伸び、そっと秘裂をなぞられる。
「ふぁ……ぁ……」
悲しいし怖いのに、慣れたやり方で愛撫を開始されると、サーフィの身体はきちんとそれに応じた反応を返してしまう。
身体に染み込むほど教え込まれた快楽の記憶が、体内の熱を呼び起こし、溶けだした蜜が溢れ始める。
クチュクチュと、強弱をつけながら指が動く。
器用な指は、いつもあっという間にサーフィを一回目の絶頂に押し上げるはずだった。
なのに、今日はいつもとまるで違う。