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氷炎組曲
【ファンタジー 官能小説】

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見えない利点-2


 サーフィと並んで夜道を歩きながら、ヘルマンは自分に言い聞かせる。
 道わきには、積み上げられた雪が背丈ほどの山をつくり、夜空から粉雪がチラチラ舞いおちる。

 錬金術ギルドの、新年パーティーからの帰りだった。
 いくつかの家からオレンジの灯りが零れているが、多くは静まりかえっている。

 錬金術ギルドの新年パーティーは、誰でも無料参加で食べ放題。
 よほど偏屈でないかぎり、大抵の人間は出かけ、まだまだ楽しんでいる時間だ。
 去年まで、ヘルマンは不参加組だったが、サーフィもせっかく出来た知り合いと新年を祝いたいだろうと、二人で参加したのだ。

 パーティーには当然、士官学校の生徒達も大勢来ていた。
 年頃の彼等はもちろん、ご馳走と可愛い女の子が目当て。
 咎める気はないが、その視線がサーフィに向いた瞬間、話は別になる。

 会場に入ってコートを預けた途端、数人の生徒がサーフィへ駆け寄ってきた。
 新年の挨拶をしつつ、彼らの視線は胸の谷間に釘付け。

 普段の授業でサーフィが着ているのは、女性の体型に合わせた武官服だ。
 凛々しい彼女にはそれもよく似合っているが、本日は胸元の大きく開いた夜会用ドレス。

 反射的に、サーフィにコートをもう一度ひっかぶせ、そのまま包んで帰りたくなったが、なんとか我慢した。
 サーフィがとても楽しそうだったから……。

 少々近づきすぎる数人の靴底を凍らせ、こっそり追い払うくらいにしておいた。
 あとはまぁ色々……生徒達が夢中になりそうな美少女の傍に、さりげなくサーフィを連れて行ったりと……どれだけ涙ぐましい努力をした事か!

 しかし、たまたま知り合いの錬金術師に話しかけられ、ふと目を離した隙に、生徒の一人がサーフィへダンスを申し込んでいた。

 それが限界だった。

 少年を氷塊にする寸前でやっと自戒し、サーフィの手をとってやや強引に帰宅を促したのだ。


 束縛したくなどいし、孤独な子ども時代を強いられたサーフィに、せめてこれからは幸せに過ごしてもらいたい。
 生徒達だけでなく、夏になれば隊商時代の仲間とも再会できるだろう。
 男女問わず沢山の友人知人に囲まれ、サーフィは輝くような笑顔を浮べている。
 それはヘルマンの望みだったはずだ。
 だが、彼女の口から嬉しそうに飛び出る知らない名前たちは、ヘルマンの心臓をチクチク突き刺す。

「冬休み明けの授業が待ち遠しいです」
「そうですか」

 何事もなかったように、笑顔で相槌を打つ。
 サーフィに微塵も気付かれないように……こんな事ばかり上手くなってしまった。



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