puppet title-1
新たなコレクションの候補があった。その少女の名前は宇桜優伊奈。県立嵐間高校に所属する、まあどちらかと言えば派手めな、それでいて進学塾に通っていたりと、青春を謳歌しつつ将来のこともしっかりと考えてたりする、結構現実派の女子高生な女子である。
容姿的な面から見ると、私の今までに集めたコレクション達に比べると見た目はだいぶ劣るのだが、あえてこの少女を選んでのは、もちろん理由がある。
先々日、私が町へ出掛けていた時の事である。私が立体交差点を渡りきった所で、大きな荷物を持ったおばあさんが難儀していたのだ。この辺りは横断歩道の距離が長く、このおばあさんの歩く速度では横断歩道が青のうちに渡りきれないのだろう。だからと言って立体交差点を使用しようにもこの荷物だ。力の弱いおばあさんが困るのも無理は無い。
私はその時急ぎの用事があったので、そのおばあさんの手助けをすることはできず、悪いとは思いながらもそのまま立ち去ろうと思っていた。その時だ。私とあの心優しき少女が巡り合ったのは。私がおばあさんから視線を離すその直前、とある少女がおばあさんの荷物を代わりに持ってあげたのだ。しかもきっと、これは私の想像に過ぎないのだが、その天使のような慈悲に満ちた少女はその上、目的地についていってあげようか、と優しくおばあさんに尋ねかけたのだ。多分。おお、なんて心の優しい娘さんだ！私はこれまで、私のコレクションの価値はその容姿ある、と一人で息巻いていたのだが、それは間違いだったとこの瞬間気付かされた。人の価値はやはり見た目ではない。それを気付かせてくれたこの少女をぜひ私のコレクションに加えてあげよう！そう心に硬く決めたのは、まさしくこの瞬間である。
素直に少女の行いに感動して、名前を調べる。私が彼女を目にした日。まさしく巡り合いと表現するしかない運命的なその日は、3月24日。今年は晩冬であり少しばかり寒い日だった。この日は平日だったので、少女は近い日に、確実にまたここを通ると私は推測した。そうなれば後は張り込みあるのみである。人に自慢できるのかどうかわからないが、私はかなり張り込みや尾行が得意で、これまで目を付けた少女の捕獲に失敗したことは一度も無い。自信通り、少女の住所と名前は2日で判明した。その他の身辺情報も1週間で洗いざらい調べつくす。そして私は知るのだ！あの少女が秘めたる衝撃の事実！ああ、なんということであろうか。この少女、先で紹介したとおり、名前は宇桜優伊奈と言うのだが、幼い頃に両親が離婚しているではないか！可哀想に。あまり楽しくない人生を送ってきたのだろう。きっと宇桜優伊奈の父親はひどい飲んだくれで、幼い彼女に手をあげていたに違いないのだ。母親は頼りにならない夫の替わりに働きに出て行って、昼間はきっと父親と二人きりで虐められて育ってきたに違いないのだ。その上、母親が汗水働いて稼いだ金を父親が勝手に持ち出しギャンブルに使い込んでいたのだろう。そうした苦労と苦痛の狭間にいた宇桜優伊奈も両親の離婚と言う希望の灯が差し込んだのは当時11歳の時である。ああ、やっとあの酷い父親から解放された、と宇桜優伊奈はどれだけ安堵したのだろうか。しかし彼女の悲劇はこれでは終わらない。両親の離婚や、父親の暴力が原因できっと学校でもいじめられたに違いない。先生もそれを見ながら、「まあ、どうせ子のこの家庭は母子家庭だし。しかも駄目な父のせいできっと金を持っていないだろうしな。こんな貧乏娘を助ける義理は無い」と冷たい目で見られていたに違いない！ああ、なんて可哀想な宇桜優伊奈。けれど彼女は逆光にもめげず、こんな心の優しい子に成長したのだ！素晴らしい！ブラボーだよ宇桜優伊奈！君はやはり私のコレクションに加わるべきなのだ！
彼女のデータの収集が済んで、早速計画を立てた。心は逸る一方だ。一刻も早く、あの悲劇を潜り抜けた天使を私だけの物にしたいのだ！きっと彼女もそれを望んでいるに違いない。「君もそう思わないか？有佐」と私はコレクションの一体に話しかける。彼女たちは喋ることこそしないものの、いつも私を温かく見守ってくれているのだ。「ええ。あなたの言うとおり宇桜優伊奈はあなたのコレクションになりたがっているわ。私も、あなたのコレクションになれた時はとても嬉しかったもの」耳を澄ませば、そう笑顔で語りかけてくるようだ。全く、私という男は全く幸せものだ。こんなに沢山の、私を愛してくれている美少女たちを人形にしてコレクションにしているのだから！