充電する師匠-8
武史は迷った。麻耶を完全に信用していいのか分からない。もし警察が自分に目を付けていて麻耶を使いおとり捜査をしているならば、今素顔を見せる事は物凄く危険だからだ。麻耶は不思議ちゃんすぎて裏が読めない。そう簡単には見せる訳にはいかなかった。
「あのな…」
口を開く武史をキュンキュンさせるような切ない表情で見つめる麻耶。
「見せて…?」
完全にやられた。まっ、いっか!そう思ってしまった武史は…
「いいよ?」
あっさりとオッケーしてしまう…。
武史はゆっくりと覆面を取る。そして素顔を麻耶に見せた。
「はじめまして、…んっと…」
「武史だよ。」
「武史さんかぁ。はじめまして、武史さん!」
「は、はじめまして…。」
満面の萌え笑みにドキッとする。
「麻耶は覆面男さんを裏切らないよ?武史も裏切らない。いつまでも味方だよ?」
「マジ?」
「うん。顔はタイプじゃないけど、悪くないね!」
「そ、そりゃどうも…(くっ…相変わらず一言多いな…。)」
とか言いながらもそういう所が憎めない。
「不細工だったら不細工で面白かったんだけど、悪くないね。タイプじゃないけど!」
「わ、分かったよ!別に付き合ってくれとは言ってないから安心しろよ!」
「え…?付き合ってくれないの?」
「え?付き合ってくれるの?」
「ううん?付き合わないよ?タイプじゃないもん!アハハ!」
「だ、だよな…。(こ、こいつは…!!)」
人をおちょくる天才だ。しかし武史は何故か憎めない。
「これからたけちゃんって呼んでいい?」
「た、たけちゃん!?」
「うん。たけちゃんは麻耶の事、マヤヤって呼んでね?」
「マ、マヤヤ!?」
「うん。今からはたけちゃん、マヤヤの仲だからね?」
「マジで?」
「うん。ほら、呼んでみてよ?」
武史はモジモジしてしまう。
「マ、マヤヤ…」
「なぁに、たけちゃん?」
「…(わ、悪くないかも〜!)」
顔には出さなかったが内心は萌えつきてしまいそうな程ラブラブ気分を感じていた。もはや麻耶が味方でも敵でもどうでも良く感じてしまった。もしも優里らに酷い目に遭う前に麻耶と出会っていたなら自分の人生もまた違ったものになっていたのだろうなぁ…、ふとそう思った。