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二兎追う方法、教えます
【学園物 官能小説】

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想う兎-7

「あの、ごめんなさい……つい、その……」
「え、いや、別に、ハハ」

 一瞬の出来事だったが、長く感じられたような、不思議な体験。
 その後は、お互い何を言っていいのか分からず、長い沈黙が続いていた。
 ツキコが顔を横にそむけてようやく一言呟き、俺は顔をこわばらせて笑ってみせた。

「……これで、いつもと同じでは、なくなったでしょう?」
「それは、そうだね、ハハ」
「それで、その……答えを、まだ貰ってないのだけど」
「答え?」
「そ、そう。だって、わたしは、その、タムラ君とお付き合い、していきたい訳で……」

 これは、難問だった。
 まず、ヨウコが好きなのは間違いがない。だが、ツキコに付き合えないとは言えない。
 我ながら優柔不断で最悪な決断力だが、本心なのだからしょうがない。
 俺だって、急に言われて、しかもキスまでされて、動揺しているのだ。
 いい考えが突然思い浮かぶはずがない。
 いつもはクールなツキコが彼女らしくない、熱い視線を俺に送っている。

「あの……ごめん。答えは、保留させてもらっていいかな?」
「保留? そう……。わたし、嫌われては、いないんだよね?」
「そんなこと……俺がハヤカワさんの事を嫌うはずないだろ」
「そっか。わたしは、待っていればいいのかな?」
「あ、ああ。俺もどうしていいか、考えまとまらなくてさ。はっきりしなくて、ごめんな?」
「ううん。わたしも、急に言っちゃったから。ごめんね」
「あのさ、保留する代わりに、何か言うこと聞くよ」
「えっ? どんなことでも?」
「ああ、いや、あまり無茶な事は……でも、今、俺の出来そうなことなら」
「そうね……」

 保留というのは、何か卑怯な気がして、思わず彼女の言うことを聞くと口をついて出てきた。
 それでも、何もしないよりは、その方がいいように思えた。
 ツキコは気持ちが落ち着いてきたのか、俺の妥協案について、落ち着いて考えているようだ。
 手を顎に当てて、探偵のようにしばらく熟考し、彼女は口を開いた。

「じゃあ、これから一緒に帰るようにしてもらって、いいかしら? 昔みたいにね。勿論、お互い用事がない時の話だけれど」
「あ、ああ。そんな事でいいなら、お安いご用さ」
「それなら、早速帰りましょうか? もう結構遅くなっちゃったし」
「ああ、そうだな」
「あと、もう一つだけ、一応言っておくわ」
「ん、何かな?」
「あの、さっきの……わたしは――――はじめてだったから」

 ツキコは少し照れくさそうに、しかし微笑んで俺を見つめて言った。
 今の俺は、ただその微笑みを、黙って見つめ返すしか出来なかった。


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