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二兎追う方法、教えます
【学園物 官能小説】

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想う兎-4

「……ねぇ、タムラ君。一つ聞きたい事があるんだけど」
「え、うん。何かな?」
「あのね、タムラ君は、サトウさんのことが、好きなの?」

 俺は飲んでいたお茶を吹き出した。
 ツキコがキャッと奇声を上げて驚き仰け反った。

「もう、びっくりするじゃない。突然吹いたりして……」
「そんな事、急に聞くからだろう?」

 俺は布巾を取って、机を拭いた。ツキコにはかかっていないようだ。
 何を急に言い出すのか……彼女がこういう話題に絡むのは、わりと珍しい。
 真面目なツキコは、ヨウコに恋愛の話題などを振られると黙りこんだりして、それをヨウコにからかわれたりしているのだ。

「で、どう思っているの? 聞きたいんだけど」
「どうって……会長は、いい人だと思うよ」
「それ、だけ?」
「あ、ああ、うん、そう、だよ」
「じゃあ、今、付き合ってる人っているの?」
「そんなの、いないよ。いたら毎日生徒会室に来ないさ」
「……そっか」
「今日は、ハヤカワさん、変だな? いつもはこんな話、しないのにさ」
「うん。今日は、サトウさんが、いないから」
「え? どういうこと?」

 ツキコの白い顔が、少し朱を帯びて、切れ長の瞳が俺をじっと見つめている。
 高校以前は、彼女は眼鏡をかけていて、真面目でお堅い印象があったものだ。
 高校からコンタクトに変えたようで、今まで彼女の容姿を意識したことはあまり無かった俺だが、彼女の整った顔立ちを目の当たりにするようになり、印象も多少変わった。
 
「……昔は、下の名前で呼び合ってたよね」
「ああ、そんなことも、あったっけ。小学校の頃だな」
「そうね。だんだん、タムラ君が、わたしに話しかけてくれないようになって」
「え、それは違うだろ。ハヤカワさんが女友達出来てから、話さなくなったんだよ」
「嘘よ。わたしがタムラ君のとこに近づいたら、タムラ君、離れていっちゃうんだもん」
「ええ? 全然覚えがないな? 誰かと勘違いしてるんじゃないの?」
「いいえ、はっきり覚えているわ。わたし、タムラ君に嫌われたのかなと思って」
「そんな」

 馬鹿な。ヨウコの事は少々嘘をついたが、今のやりとりの事で俺は嘘をついていない。
 離れるとか、嫌うとか、そんな事をした覚えは毛頭無かった。
 幼少のツキコとの付き合いは、お互いの成長の過程の中で、自然と消えた。
 俺は、そういう風に認識していた。
 それで、たまたま同じ高校に入り、こうして生徒会にいるのも、何かのめぐり合わせだったのだ。
 ツキコが細い端正な眉を、少し悲しそうにしている。


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