淫欲の虜-8
久保田が夢見心地といった表情でふらふらと教室を出て行った後、カタン、と音がした。
教室扉の外側に備え付けられた、袋状の新聞受けが揺れている。
そこには保護者や生徒から、たまに手紙が入れられることもあるが……。
すでに真夜中に近い。
こんな時間に、いったい何?
マヤは嫌な予感を胸に抱きながら、ドアを開け、新聞受けを探った。
薄い封筒のようなものが手に触れる。
取り出してみると、なんの変哲もない茶封筒で、宛名も何も書かれていない。
びっちりとのりづけされた封筒をハサミで開ける。
中身は写真が1枚。
「あっ……!」
そこには上半身裸のマヤと、その胸に顔を埋める男……松山サトシの父親の姿がしっかりと写っていた。
お互いの服装から、それが間違いなく今週の水曜日、公園での戯れのときのものだとわかる。
写真の裏には『最低の淫乱女に似合いの罰を用意した 逃げるな』と書かれている。
……こうなったら早く事を進めなければ。
脳内でやるべきことが箇条書きにされていく。
ふっと息をついて顔を上げても、教室の窓からのぞく曇った空には、星屑ひとつの輝きすら見当たらなかった。
(つづく)