淫欲の虜-6
そして金曜日の午後、仕事が始まる。
事務作業を処理し、講師陣に指示を出し、生徒と母親たちの相手をするマヤの姿はきびきびとし、張りがあった。
ここしばらくそうであったような、ぐったりと疲れた様子は微塵もない。
「どうしたの? ちょっといいことでもあった?」
鋭い女性の講師たちが、悪戯っぽい目で尋ねてくる。
「あはは、何でもないですよ。週末が近いから、浮かれてるのかも」
適当に受け答えしながら、マヤは心の中で笑った。
終わりの無い奴隷生活を、そろそろ卒業することに決めたのよ。
もちろん、頑張って来た分の報酬をきっちりいただいてからね。
あれほど親身になって考えてきたつもりの生徒たちのことも、その保護者たちとの関係も、気持ちが決まってしまうと未練の欠片も残らない。
自分の乾いた心に寒気がするほどだった。
……その日が来るまで、誰にも悟られてはいけない。
マヤにとっての『味方』以外には。