雪の贈り物-5
「めーっ!!にゃんこー!!」
途端にメリーは叫び、アースは遂に吹き出した。
グロウは嫌な顔をして人型のままメリーの額を指で弾く。
『ダ〜メ。我が儘言うとおやつ抜きだぞ』
「ぶぅ〜」
メリーは額を可愛い手で擦りつつ大人しくなるが、頬を膨らましたままだ。
『メリー?』
「あい。ごめちゃ」
少し厳しい顔でグロウが呼ぶと、メリーは素直に謝る。
「すっかりパパだな」
『うるせぇよ』
アースがからかうとグロウは素っ気なく答えながらも、尻尾が嬉しそうに揺れていた。
「俺を呼んだのはメリーの事か?」
『ああ……メリーの魔力の波動を辿って親元を探してくれ』
グロウの頼みにアースは片眉を上げる。
「リンにも出来るだろ?」
グロウは魔獣なので人間が使うような魔法は使えないが、リンは魔法使い最高ランクの魔導師……アースが出来る事は大抵リンにも出来る筈だ。
『メリーの夜泣きが酷くてな……寝不足で集中できん』
昼間はいいのだが、夜になると母親を探して大号泣……こうなるとリンでしか泣きやまない。
一晩中抱っこしたまま朝を迎えたりしてぐったりなのだ。
そんな訳で只今、仮眠中。
「成る程……世の中のお母さんってのは立派だな」
『リンも言ってた』
「オッケー……魔力封じ解除するぞ」
アースはそう言ってメリーの額を指で突く。
『あ゛?ちょっ待っ?!』
グロウの制止の言葉は少し遅かった。
ビュウウゥーーーーッ
「きゃあ♪」
「いいぃっ?!」
魔法陣解除と同時にメリーを中心に吹雪が吹き荒れ、アースは髪を逆立てて硬直する。
メリーは大喜び、グロウはうんざり……アースは慌てて魔法陣を作り直してメリーの額に貼り付けた。
「こ、こりゃあ……凄ぇな……」
こんな吹雪を日常的に起こされたらたまったもんじゃない。