追加検査-1
だが警官はもう来なかった。その代わり区役所から保健婦が２名も来た。
二人とも若くてかなりの美人だ。
一人は白衣を着ていたが、履いていた靴が真っ赤なハイヒールだった。
白衣の下は紺のスーツのようなのに、何故靴だけ真っ赤？と思った。
体はスマートだが胸は大きかった。
そして髪はアップにしていたが眉も目もやや吊りあがっていて顎が尖っていた。
もう一人は何故か白衣を着ていなかった。
淡いピンクの下地に赤いイチゴ模様のブラウスを着ていてエメラルドグリーンのスカートを履いていた。
靴はブラウンの靴だった。
全体的にスマートで髪は肩まで垂らしていたが僅かにウェーブがかかっている。
目が大きく眉が濃い。だがこっちは白衣の女よりもさらに若く見えた。
というかまだ未成年の感じがする。白衣の女が言った。
「区役所から来ました。保健婦の立花と言います。
きょうは訪問による健康相談に来ました。」
「そちらの女の子は？」
「研修生の岡野です。学生ですが、研修期間こうやって連れて歩いています」
「はあ、それでいったいきょうはどんな御用で？」
「先月実施した健康診断の結果は届いていると思いますが、授精能力の項で疑問な点がありまして」
わしは、またかと思った。
「看護師さんに検査してもらったけれど、わしのは役に立たないと言われたんだよ」
「そうなんですが、他の血液検査や尿検査の数値を見ると、例の感染症特有の特徴が見られなかったものですから」
「なんだい？その感染症というのは？」
「今流行の無精子病や勃起不全症の原因となる感染症です。
これにかかると血液検査と尿検査にある特徴的な数値が見られます。
でもあなたの場合、それが見られないということは、場合によっては授精能力が潜在的にあるという可能性が考えられるのです」
そんなことは知らなかった。そうか、血液検査とか尿検査でもわかるのか。
それで、わしは言った。
「でも、授精能力……っていうんですか？
その検査にはいくらがんばっても勃起しませんでしたよ」
すると白衣の立花は岡野と顔を見合わせてから、わしの方を見て言いづらそうに言った。
「こんなことを言いたくはないのですが、担当の看護師が松下さんにとって魅力がなかったとかいうことはありませんでしたか？」
「とんでもない。とても親切で可愛らしい娘さんでしたよ。み……魅力的でした」
「そうですね、娘さんかお孫さんのように可愛いという場合もありますからね。
でも、だからと言ってセックスしたくなるとは限りません。
それに確か新人の子だったので、学校で習った通りに手技による局部マッサージで検査なさったのでは？」
「えっ、あっ、はい。そうです。手でこう……」
「どうも最近の学校教育は現場の要求に追いついていないようです。
今現場では実際のセックスにできるだけ近づけて検査するのが、能力発見に効果的だという報告がされて研究発表も何本も出ているのです。
それで、申し訳ありませんが、私が区の要請を受けて再検査に参りました。
検査した新人の看護師も可愛いくて魅力的だったと仰って頂いたことは敢えて否定しませんが、人間の性衝動は対象を選ぶと言います。
この岡野は学校ではミスキャンバスに選ばれていますし、私は都の２３区全部を合わせた中でセクシー保健婦ナンバーワンに選ばれています。
いってみれば清純派の代表とセクシー派の見本がわたし達なのです。
ですから私とこの岡野が検査してなおかつ勃起が起きなかったら、授精能力がないという可能性はかなり高くなりますが、それまでは未知数なのです」
わしは、たぶん今度は駄目だと思った。絶対ばれる。
確かに二人とも清純派美少女にセクシー美女だ。
だいたい、わしは村にいた頃は、顔はおかめでも女の体をしてたら、即欲情していたもんだ。
そこでわしは一計を思いついた。
「すまんが、わしはここ３日くらい風呂に入ってないもんで、ちょっと体を洗って来たいんだが良いかね？」
「ええ、それは構いませんが……」
立花がそう言ったので、わしは早速風呂を焚いて風呂場に入った。
本当は前の日に入ったばかりだが、わしは『種抜き』をしようと思ったんだ。
それで体を洗った後、せんずりを始めた。もったいない話だが仕方ない。
ついこの間の婦警に扮した女優たちのことを思い出して勃起まではしたが、久しぶりのせんずりなので、なかなかうまくいかない。
「松下さん、ちょっと宜しいですか？」
急に浴室の外から立花保健婦の声が聞こえた。もしかして見張られていたのでは？