そして、大人になる-5
「嗚呼、生きてた……良かった」
「……約束、したからな」
「ふ、貴方こそ、守るタチだっけ?」
そう言い泣きっ面で微笑み、再び縋り付く彼女。
愛しい、
愛しい、
愛しい、
壊してしまいたいほど。
どうしてこんなに……
「ずっと、悔やんでたから」
「何を」
出た声が思った以上に掠れていて、自分でも驚いた。
「貴方の『不安』に、答えられなかったことを、ね」
「不安―…?」
「―…貴方が私に言った科白(せりふ)は、不安から言わせた言葉だったから」
「―――!」
本当は、分かっていた。
『――ヤヨ、此処を出るか。』
あれは、俺の不安な気持ちが言わせた譫言(うわごと)。
分かっていたのに。
「私の『不安』は『行けない』と言ったの」
「……そうか」
【―――先が見えない…。】
そんな漠然とした幼い不安感に、俺たちはすっかり支配されていたんだな。
「あ、それ変わらないのね。」
「あん?」
「皮肉な笑い」
「……あぁ」
「ふ、『あぁ』の虫もね」
「お前は……怖くないのか」
「誰が?」
「俺が」
見上げる、怪訝な顔。
それから、またフ、と笑う。その表情が、あまりにも昔と変わらなくて―…
俺は腕に力を込めた。