期末テスト=恋人検定テスト!?-4
「お、太田 憲です!し、白雪さんとお付き合いさせてもらってます!」
ガチガチに緊張した憲が玄関で母さんに頭を下げた。
「あらぁ、そんなに緊張しなくてもいいですよ。さぁ、お上がりなさいな」
「お、お邪魔します!」
妙に優しい声の母さんに首を傾げながら、靴を脱いで母さんに続く憲の横を歩く。
「マジで若いお母さんだな……うちの母さんとは大違いだ。優しそうだし」
「いや、本性は狂……」
「どうした?」
「い、いや、何でもない………」
今、母さんから『それ以上言ったら殺す』って目で言われた……。事実だろ、狂暴なのは。
憲はそのまま、リビングに通され、ソファに座る。アタシはもちろん憲の隣だ。
「挨拶が遅れましたね。白雪さんの母の幸恵です」
「あ、どうも……太田憲です」
「で、ずばり聞きます」
「は……はい」
「貴方、白雪さんの何処を好きになったのですか?」
ゴブッ!!
「かかかか母さん!?」
本日三度目のコーヒー吹き。いつもより多く吹き出しております……って違う!!
だ、駄目だ!母さんがいると調子が狂う!!
「あらあら、汚いですね。孝之さん……は使い物になりませんね。ちょっと待ってください」
コーヒーをボタボタ机に溢すアタシをしり目に母さんは布巾を取りにキッチンに消えた。
「孝之のやつ、なんで死んでるんだ?」
「……聞かない方が憲のためだ」
下手したら憲も孝之の二の舞いになるかもしれない。それは阻止しなければ!!
一人決意を胸に母さんを待つ。
「はい、白雪さん。お拭きになって」
母さんから手渡された布巾で机を拭く。
「では、太田さん。質問にお答え頂けますか?」
「いいですけど、全部言ってたら日付、変わっちゃいますよ」
……憲、真顔で言うな。恥ずかしい!!って言うか、サラッとよくもそんな事を……。
…おい…今、嬉しいんだろ?…とか思っただろ?
っと、読者に喧嘩売ってる場合じゃない。
「あら、そんなに白雪さんの好きになってくださってるなんて……ありがとうございます」
「あ、いえ…」
「母の私が言うのもなんですけど、粗暴な子になっちゃって、ちょっと心配だったんですよ。でも、安心ですね」
「じ、じゃあ、アタシ達の事、認めてくれる?」
母さんは少しばかり酷い事を言ったような気もするが、それよりも憲を認めさせる方が先決だ。
「僕からもお願いします。その……交際を認めてください」
憲が頭を下げたのを見て、アタシも慌てて頭を下げる。
母さんはコーヒーを一口飲んで、アタシ達にこう告げた。
「良いですよ」
「本当ですか!?」
やった!!母さんは嘘をつかないからな。これは本当だぞ!!
と、喜色満面で母さんを見るが、次の一言で憲とアタシはぬか喜びだったと知る。
「でも、その前にひとつ…試させてくださいな」
「………?」
憲と顔を見合わせてから、母さんを見る。
「ちょうどもうすぐ、期末テストですね。太田さん、学年10位に入って下さい。1位は白雪さんが取るでしょうし、2位では少々辛いかもしれませんしね」
「へ……?」
「はぁ……!?…か、母さん!」
「白雪さんは私の自慢の娘です。知っての通り、白雪さんは大抵の事に秀でています。そんな白雪さんの恋人なら、学年10位くらい、取ってみせてくださいな」
そ、そんな無茶な。憲は文系ならアタシ並の成績だけど、理系は最底辺をさ迷ってるんだぞ?
中間の数学なんて、確か24点だった。
「もちろん、白雪さんが協力しても構いませんよ」
「やります!!」
「憲!?」
「あと一週間、死ぬ気で勉強しないと!!」
あぁ、駄目だ。憲もやる気になっちゃった。
……まぁ、しょうがないか。